“初陣”で敗北の黒歴史…「名古屋地検特捜部」は廃止すべき? 発足当初から疑問視する声も
初陣から黒星がつき
元検事が続ける。
「大阪は一連の検察批判の震源地になってしまったことも事実で、IR汚職も、もちろん東京のお手柄。『大阪地検特捜部こそ不必要だ』という意見は関西の司法関係者の間でも少なくない」
また、バブル経済が崩壊し、歴史的な金融危機の嵐が吹き荒(すさ)ぶ中、大きな期待を背負って3つ目の特捜部として発足した名古屋特捜だったが、実際には船出からつまずいていた。
新設翌年の97年、名古屋特捜は北陸を代表する金融機関だった北國銀行で、元頭取が信用保証協会役員と共謀して協会に対し、「拠出金は負担しない」と圧力をかけて借金を肩代わりさせたことで協会に損害を与えたとの見立てで、協会役員らとともに当時は現職だったこの元頭取を「身分なき共犯」として逮捕。だが、協会役員らの犯意は明白だったものの元頭取は1審も2審も有罪とされながら一貫して冤罪を主張し続けたのだ。
そして2004年、最高裁は検察側が描いた事件の構図に疑問を投げかけ、「背任罪と認定するには合理的な疑いが残る」と判断。2審の有罪判決を破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。結局、高裁は元頭取を無罪とし、名古屋特捜が手がけた“大型経済事件”の初陣は完敗に終わった。
元法務省幹部は、当時の捜査担当者らの心情を代弁する。
「バブルの後始末を任された特捜検察は、10年ほど前のヒットドラマ『半沢直樹』のように、貸し剥がしなどで社会の“悪役”扱いとなった銀行の犯罪摘発を国民から期待されていた。名古屋特捜は、世論の期待に応えようと、無理筋な見立てで銀行トップを断罪しようとして、判断を誤ってしまったということなのかもしれない」
警察とのすみ分けを
検察には、1次捜査権を行使して現場で捜査を行う警察を指揮し、起訴するかどうか判断したうえで公判廷において有罪を立証するというメインの役割がある。
検察官や検察事務官らが、自ら摑(つか)んだ違法行為の情報を端緒に事件化する「独自捜査事件」や、国税局を中心に証券取引等監視委員会や公正取引委員会といった“準司法機関”からの刑事告発に基づいて立件する「財政経済事件」など、特捜が扱う事件は、
「テレビやネット、新聞でも大きなニュースとして取り上げられるので花形ではあるものの、あくまでも特別なケース」(前述の元法務省幹部)
警察関係者は、捜査の現場で抱いている本音をこう明かす。
「犯罪を捜査する中で、検察と警察はすみ分けをはっきりとさせるべきではないかと、個人的には感じています。捜査現場こそ、人材の再配分による効率化が急務なのです」
検察改革を推進したヤメ検(検察官を辞めて転身した弁護士)も、自説をこう述べる。
「自民党の派閥の裏金事件など、『政治とカネ』の事件を繰り返す政界を浄化することを使命とされている特捜検察も、組織のスリム化と効率化を進めるべき時が来ています。そうすることによってのみ、国民の付託に応える結果が導き出せるのですから」
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