「さしせまって金が入要にて…」 坂口安吾が愛する女性のために書いたとされる“手紙”を初公開

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 机の周りを埋め尽くす丸められた原稿用紙や読み終えた新聞、灰皿にたまった吸い殻、部屋の奥には万年床……。10月4日から神奈川近代文学館で開催中の「坂口安吾展」で再現された「安吾の書斎」である。誕生から不遇の時代を経て、戦後の混乱期に八面六臂(ろっぴ)の大活躍をした無頼派作家の軌跡をたどる秋の特別展で、初公開された目玉展示とは……。

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未発表原稿も公開

 今回初公開された新資料は、中央公論社の編集者に宛てた書簡5通と、未発表原稿を含む草稿2編。

 中でも注目は、安吾が中央公論社の編集者に宛てた書簡。昭和21年4月に「新潮」に発表され、絶賛された「堕落論」を収める作品集(仮題『日本文化私観』)を中央公論社から出すという約束をほごにしてくれという安吾の願いがそこには書かれている。

〈小生目下さしせまつて金が入要にて(中略)他社から出版させて下さい〉

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