監禁少女が残した「ペンダント」は救済か呪いか 男たちに“痛みの報い”をもたらしたのち、持ち主が選んだ結末は【川奈まり子の百物語】
【前後編の後編/前編を読む】 アパートの一室に囚われた10代少女 “監禁仲間”から去り際に託された「お守り」に入っていた驚愕のモノ
これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集し、語り部としても活動する川奈まり子が世にも不思議な一話をルポルタージュ。
著者・川奈まり子が“意外に身近”だと感じる「監禁事件」。相談者・ミミさん(仮名)の口から語られたのは、10代の頃、20代の男にアパートの1室に監禁された過去だった。そこで出会ったもう一人の少女・A子は数日で男に連れ去られていったが、去り際、ミミさんは彼女から「お守りになる」というロケットペンダントを託される。その中に入っていたのはA子のものと思われる人の歯。ペンダントを首にかけると、パン!と何かの破裂音が聞こえたという。ほどなく疲労困憊した男が戻り、すぐに眠りに落ちて……。
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【写真を見る】「幽霊でもいいから会いたい」残された遺族の心を救う“死者との再会”
午前3時頃だった。ミミさんは寝つかれず、蒲団に横たわったまま窓の方を眺めていた。
そのうち窓のブラインドの隙間が白々と明るんできたので、朝になったのだと思ったが、そうではなかった。
みるみる光が強くなり、間もなく一条の光線が差し込んで壁を照らしたかと思うと、そこに人の形をした白い影が現れた。
輪郭がぼやけて判然とせず、半ば透けていて、全身が光り輝いている。
それが玄関の方へ歩いてゆくと、一切、音を立てずにドアが開いた。
開いたドアのところに佇んで、こちらに向かって手招きする。
ミミさんは吸い込まれるように、着の身着のまま、玄関に置いてある男のサンダルを裸足に突っかけただけで外に出た。
手ぶらで、小銭すら持っていなかった。
辺りはまだ暗かった。
静かな脱出劇
アパートから徒歩2~3分の児童公園で、水道の水を飲んでベンチに腰を下ろして、これからどうしようかと考えるうちに、今度こそ本当に夜が明けてきた。
そこへ、足音が近づいてきた。
そちらを向いて、遠目にもそれとわかる見慣れた男の姿を認め、ミミさんは暗い絶望と無力感に呑まれた。
――また連れ戻されるんだ。
無意識にA子から貰ったペンダントを服の上から握りしめた、そのとき、道路を横切ろうとした男の身体を新聞配達のオートバイがはねた。
男が激しく転倒し、オートバイも横倒しになった。
驚愕して立ちすくんだ一瞬の後、ミミさんは公園から走り去った。
そして二度と男のアパートには帰らなかった。
……ミミさんの問題はそれで解決したわけではない。その後、またしても放浪し、別の男にフラフラとついていったあげく暴力を振るわれた。
17歳のときにようやく福祉に繋がって、自立支援施設の女子寮に入所できたが、それからも順調な道のりを歩んできたとは言えなかった。
けれども、危機に陥るたびにA子のペンダントに救われたのだ、と彼女は言う。
2人目の男から逃げたときも、そうだったという。
「殴られてトイレに逃げ込んで鍵を掛けたら、ドアをドカドカ蹴られたんですよ。怖かったから必死でA子のペンダントを握って『助けて』と祈りました。そうしたら急にドアの向こうでボキッと変な音が……。同時に物凄い悲鳴が聞こえて……」
男は「爪先が折れた」とわめいていたそうだ。
それから間もなく、男は「病院に行く」と言い、這うようにして表へ出ていった。
その留守の間に、ミミさんは逃げ出すことができたということだ。
自分を決定的に傷つけようとする者には、突然、災難が降りかかる。
その法則に気づいたミミさんは、A子のペンダントを肌身離さず持つように心がけた。
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