アパートの一室に囚われた10代少女 “監禁仲間”から去り際に託された「お守り」に入っていた驚愕のモノ【川奈まり子の百物語】

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ミミさんの不幸

 ここでは仮に彼女をミミさんと呼ぶことにする。

 ミミさんは30代半ばで、派遣の販売員として働く他、ハンドメイド雑貨の通販をして生計を立てているが、中学3年生の頃に両親が離婚してからの約2年間、17歳になるまで住所不定であった。

 そうなったのは、互いに不倫をしていた父母それぞれが離婚後、その不倫相手と同棲してしまい、行き場を失ったことが原因だったという。

 不運なことに、それまでの子ども時代も幸福なものではなく、祖父母や親戚には会ったことさえなかったのだという。

 中学を卒業してしまうと、頼れる大人が身近には1人もいなくなった。

 そして親権を取った母に追い出されると同時に家出状態になり、短い放浪生活を送った後、声を掛けてきた若い男についていった結果、悲惨な事態に陥ったというわけだ。

「アパートに軟禁されてしまって……脱出しても行くところがなくて、戻ると殴られ……怖いので、彼の許可がないと外に出られなくなってしまいました」

 男は20代で、平日はきちんとした服装で外に働きに行く、一見ふつうの勤め人だったようだ。いつも朝7時頃にアパートを出て夜9時頃に帰宅していたが、彼女が連れてこられて半年あまり経った頃、男はいつもより遅く、深夜11時頃に女の子を伴って帰ってきた。

出会いと別れ

 ミさんと同じく10代の少女だった。

 この少女A子は、見るからに哀れな様子をしていた。

 服装がみすぼらしく、顔色が悪くて、立っているのもやっとという状態だったのだ。

 すぐに蒲団に寝かせたが、翌日も、男が外出している間は横になったまま、ほとんど起きようとせず、起きたかと思うとトイレで吐き下していた。

 発熱していて、額に手を当てると熱かった。

 やがて帰宅した男は、買ってきた風邪薬をA子に服用させた。

 しかし回復せず、4~5日も経つと、男は苛立って、こんなことを言った。

「騙された。Bに〝返品〟するから身支度しろ」

 Bはこの男の友人で、アパートに来てミミさんに対する暴行に加わったことがあるゴミクズのような悪党だった。

 男はこれまでにBをはじめ2~3の知人友人を連れてきては、ミミさんの肉体を与えて彼らの自由にさせ、その都度、小銭を稼いでいたのである。

 ミミさんには、どうやら少女A子は、Bから男に譲渡されたようだ、と、ピンと来た。

 A子は非常に寡黙で、ここに来てからは、死んだ魚の目をして黙りこくっているばかりだったが、このとき、男が携帯電話を手に外に出ると、初めて話しかけてきた。

「ねえ、逃げないの? 逃げればいいじゃん。出来るっしょ?」

 今までこの子の顔を真正面から見たこともなかった、と、ミミさんは呆気に取られながら思った――前歯が何本か欠けていることも知らなかった、と。

「ねえ」

 と再び、催促する口調で言われ、仕方なく「行くとこないし」と答える。

……と、A子は首から下げていたロケットペンダントを外して「あげる」と強引に押しつけてきた。

「お守りになるから、大事にして」

 それが、ミミさんが聞いたA子の最後の言葉だ。

 男はすぐに戻ってきて、夕方、車で迎えにきたBと一緒にA子を連れて出ていくと、翌日の深夜まで帰らなかった。

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