なぜ「国宝」「宝島」は3時間上映でも“休憩”がないのか…昔の長尺映画に“必ず”休憩があった納得の理由

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休憩なしで「3時間37分」の映画も

 では、そういった、全三部作というような構成ではなく、あくまで1本の映画として、もっとも長い日本映画は、何だろうか。

「おそらく、5時間17分の『ハッピーアワー』(濱口竜介監督、2015)ではないでしょうか。さすがに途中、2回休憩が入りますが、映画館によっては、事実上の三部作に分け、1部ずつ上映するところもありました」

 これはワークショップから生まれた作品で、30歳代後半のふつうの女性4人の日常を描くものだが、主演の4人とも演技経験ゼロ。ところが、それがかえってリアルな画面を生む結果となり、独特な面白さを生んだ。4人とも、ロカルノ国際映画祭で、最優秀女優賞を受賞したほどである。濱口監督は、「ドライブ・マイ・カー」(2021)で米アカデミー国際長編映画賞を受賞したが、こちらも2時間59分で、けっこう長い作品だった。

「そのほかでは、4時間38分の『ヘヴンズ ストーリー』(瀬々敬久監督、2010)、3時間57分の『愛のむきだし』(園子温監督、2008)などが長尺ですが、どちらも休憩があります。休憩なしだと、3時間37分の『EUREKA(ユリイカ)』(青山真治監督、2001)が最長ではないでしょうか。バスジャック事件で心に深い傷を負った少年少女たちの物語で、海外でも、たいへん評価の高い作品ですが、当初は5時間半になる予定だったそうです。ただしこの映画は、途中で休憩を入れる劇場もあるようです」

 どうやら、さすがに3時間半あたりを超えたら、休憩を入れないと、観客は耐えられなくなるようである。実は、この映画ジャーナリスト氏、以前に、映画の上映時間と“膀胱”の関係について、専門医に取材したことがあるという。

「一般的に、健康な日本人の膀胱の容量は、500ml程度で、そこに150~200mlほど水分がたまると、尿意をおぼえはじめるんだそうです。ほぼ、小さめのペットボトル1本分です。ただし、膀胱が健全であれば、1~2時間は、そのまま我慢できますが、それ以上になると、膀胱炎を引き起こしたり、最悪、尿漏れみたいなことになってしまいます。ということは、2時間以内の映画で、Sサイズ(280ml)のコーラを飲んでいる分には“無事”にすむわけです。しかし、Mサイズ(330ml)や、ましてやLサイズ(550ml)を飲み、休憩なしで2時間超えとなると、危険信号です」

 シネコンのCMでは、さかんにポップコーンとともにコーラを勧めているが、2時間超えの場合は、控えたほうがよさそうである。

森重良太(もりしげ・りょうた)
1958年生まれ。週刊新潮記者を皮切りに、新潮社で42年間、編集者をつとめ、現在はフリー。音楽ライター・富樫鉄火としても活躍中。

デイリー新潮編集部

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