「ガンダーラ」「モンキー・マジック」誕生秘話──ミッキー吉野が語るゴダイゴ結成50年
米国留学中からアイデアにあった「西遊記」
そうして構築した英語詞の世界は、ほどなくヒットする。1978年10月に放送が始まったドラマ「西遊記」(日本テレビ系)のオープニングテーマとして「モンキー・マジック」が全編英語詞のシングルとして同年12月にリリース。番組開始当日に発売されたエンディングテーマの「ガンダーラ」とともに大ヒットになった。実は米国留学中に「西遊記」をテーマにした音楽を作りたいと考えていたというから驚きだ。
「日本に帰ったら西遊記を題材に音楽を作ろうと思ってたところに、日本テレビからたまたまそういう話があったんでね。当初は、ゴダイゴには音楽家が集まっていたので、他人のアルバムでバックミュージシャンを務めたり、アレンジを引き受けたりしていた。でも他人のバンドでやっても、よその店の看板を塗っているようなもの。バンドの価値を上げるにはヒット曲を出すしかない、と考えたから、何としてもヒットを出そうと、『ガンダーラ』ではそれまでにしなかったアレンジをした」
目指したのは、米フォークグループの「ママス&パパス」のような世界観だという。その代表曲のひとつ「夢のカリフォルニア」のような独特の哀愁を帯び、ビート感が前面に出てこないアレンジを意識した。
「カップスやママス&パパス、来年でデビュー60周年を迎えるGSのザ・ワイルドワンズもそうだけど、ヒットしたのはみな12弦ギターの曲。『ガンダーラ』もそのイメージで、生でやるときは浅野孝已(ギター)に12弦ギターを弾いてもらった。加えてリズムもベースの音の長さからきっちりと合わせて。シンプルなものほど適当にやるとダサくなっちゃうから」
そうしたこだわりが、大ヒットにつながった。
スタンダードとなった曲たち 小学生も歌った「モンキー・マジック」「ガンダーラ」
まだまだ英語詞に対するハードルの高い時代に、西遊記のテーマとなった2曲は大ヒットしたわけである。
「あの頃、小学生がみんな『モンキー・マジック』って歌ってたよね。前半部分の英語はテキトーなんだけど、サビの部分だけはみんなちゃんと歌ってた(笑)。でもテキトーな英語詞の部分もみんなノッてた。それって“基本”だと思うんですよ。ノレれば人間ってポジティブになれるし。『ガンダーラ』も含めて、メジャーな曲調の多かったタケカワの作品の中では珍しくマイナー調で、最初、本人はあんまり好きじゃなかったんだよね(笑)」
反響の大きさは、全国津々浦々でしみじみと感じることとなった。
「最初は在来線の電車には乗れなくなったね。僕らが動くとみんなも動くから。僕はカップスのときに多少は知っていたけど『これが売れるということなのか』と改めて思ったね」
当時、プロデューサーのジョニー野村と「スタンダードを作ろう」と話していたが、図らずもそれが実現していたことになる。
「当時はもちろん実感なんてない。スタンダードって『マイ・ウェイ』など誰でも知ってる曲だからね。それがこれだけ長く歌われて。テレビで猿が出ると『モンキー・マジック』、鉄道関係のものなら『銀河鉄道999』、それに子どもに関係するものなら『ビューティフル・ネーム』が流れたりとかね。それも長くやってるから分かるわけだけど、幸せなことだし、うれしいね」
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