中国が「Kビザ」導入で、年間10万人超「日本への留学生」がさらに増加の可能性 「在日中国人」も100万人突破が秒読みに

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厳しい大学入試や就職難で増え続ける中国人留学生

 このところ、中国人留学生は東京大学や京都大学、早稲田大学、慶応大学、北海道大学や東北大学、名古屋大学、立命館大学などの有名私立・国立大学に殺到していると伝えられるが、それだけではなく地方の私立大学が国からの私学助成金を目当てにして、中国人留学生を多数入学させているとの報道もある。一部の難関大学を除いて、日本の大学は、中国人にとって入学のハードルは決して高くないともいえる。

 中国人の学齢期の若者が日本を目指す背景には、中国の大学入試が近年、苛烈化する一方となっていることがあげられる。昨年6月7、8日両日に行われた「高考(大学入試)」には過去最高の1342万人が受験した。今年の受験者は昨年より約7万人減の1335万人だったが、それでもかなり莫大な人数といえる。小学校時代から朝7時から夜10時ごろまで毎日勉強してようやく合格すると言われるほどの過酷な受験戦争が行われている。

 さらに過酷なのが「就職戦争」だ。中国は社会主義体制なのでほとんどの企業は国営で社員数も決まっているので、就職できない卒業生も出てくる。今年の若者(16~24歳)の失業率は過去最悪の18.9%と、日本に比べると非常に高い数値を記録している。

 中国では「就職ができれば、人生は安泰」というわけにはいかない。自動車業界の低迷や不動産バブルの崩壊による市場の急速な冷え込みなどで、企業ではリストラが相次いでいる。好調と言われるIT企業でも35歳を過ぎれば、会社から「独立して、自分の会社を立ち上げてみたら」との実質的肩叩きにあい、家族を抱えて路頭に迷うことも珍しくないと伝えられる。このように、中国では大学入試の過熱化や就職難、さらに経済不振によるリストラの増加などが表面化し、若者が将来を悲観せざるをえない状況が加速している。

少子化、労働力不足の日本がターゲットに

 と、目を転じて、隣国の日本をみると、人口は年々減少し、少子化が進み、大学入試の受験生も少なくなっており、一流大学ですら、外国人留学生の誘致に力を入れている状態だ。

 日本の企業は中国人でも大学を卒業すれば、日本の大卒者と同じ待遇で受け入れるケースが少なくない。それも中国人留学生が日本を目指す大きな理由となっている。中国人の親が日本でマンションを購入し、子どもを中学、高校から大学へと進学、日本の企業に就職させるケースも増えているといわれる。日本企業は解雇規制が強く働くため、雇用も極めて安定している。家族も呼びよせ、中国人が多く住む地区に住めば、中国で生活しているのと同じ環境だ。日本を目指す中国人留学生が今後も増え続けることは至極当然といえるのではないか。

相馬勝(そうま・まさる)
1956年生まれ。東京外国語大学中国語科卒。産経新聞社に入社後は主に外信部で中国報道に携わり、香港支局長も務めた。2010年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『習近平の「反日」作戦』『中国共産党に消された人々』(第8回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞)など。

デイリー新潮編集部

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