歌心りえ、50歳を越え日韓で絶賛される人気歌手に 「諦めなかった人生」とさだまさしや本田美奈子.への熱い想いを語る

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 2025年4月、2つのレーベルから異例となる同時メジャー・デビューを果たした歌心りえ。彼女は、50歳の時に挑んだ日韓共同の歌姫オーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』のファイナリストに選ばれて以来、両国のさまざまな音楽番組に出演しては、その歌声が絶賛されてきた。

 実は彼女、この30年のあいだに男女ユニットや女性トリオなどを経て、今回が人生5度目のメジャー・デビューとなる。これまでどのような道を歩んできたのだろうか。現在、人生初となる全国ホールツアーを回っている歌心に、これまでの全活動においてのサブスクでの人気曲や、その“諦めなかった人生”について語ってもらった。

葛藤の末、50歳で“歌姫オーディション”に挑戦することに

 まずは、彼女の人生の大きな転機となった『トロット・ガールズ・ジャパン』に応募したきっかけから尋ねてみた。

「知り合いから、“こんなオーディションがあるよ”と教えてもらったんです。嬉しいお話ではありましたが、“私、もう50歳ですよ。応募できるんですか!?”って聞き返しました。そうしたら、“年齢は関係ないらしいよ”と言われたので、応募内容を調べてみたんです。

 そこで、“トロット”(韓国における“懐メロ”)という言葉を初めて知り、その日本版を募集するということなら、私も昭和歌謡をたくさんカバーしていたので、挑戦してみたいなあ……と。でも、“ちょっと待てよ、私は何のためにこれを受けるんだ?”と、また迷って」

 歌心としては、これまで30年近く歌ってきて「音楽は勝ち負けじゃない」ということがようやくわかってきたのに、ここでまた10代や20代の若い方たちと競うのはどうなのだろうか、と戸惑いがあったという。それでも最終的には、「今の自分の歌を、審査員の方や一緒に闘う共演者に評価してもらうことが、今後の自分にとって大きな糧になるんじゃないか」と期待を込め、応募してみることに。

「当時は、主人が経営するライブハウスで歌ったり、ときどき営業として地方で歌ったりしていたのですが、自分の歌がどういう風に受け入れられるのかに長らく関心があったので、決心しました。最初はネットで応募して、対面審査で歌って合格となり、番組に出ることになりました。その後も準決勝、決勝と気づけば進んでいって、自信なんて全くなかったので、自分でもビックリしました!」

 毎週放送されるその番組では、歌心の歌唱に対する反響が日に日に増していった。実際、他の平成生まれの出場者の多くは、昭和や平成初期の楽曲を総じてフラットに歌っているなかで、昭和生まれの歌心だけが原曲を知っているぶん、楽曲ごとの深い解釈があるように感じられた。

 その後、オーディションでファイナリスト(トップ3入賞)となり、韓国MBNのテレビ番組『韓日歌王戦』への出場権を獲得した。昭和・平成の歌謡曲、J-POP、そして演歌と幅広い楽曲をカバーして、日本より先に韓国のSNSやYouTubeで人気を博していった。それゆえ、彼女の人気曲は自ずとカバー中心となっている。

 ちなみに、歌心りえのSpotifyでの月間リスナーは2025年10月現在、ソロ名義だけで、約1万4千人。国や地域別で見ると、日本が大半ではあるものの、韓国やインドネシアでも多く聴かれている。韓国は、前述の『韓日歌王戦』の影響が大きいが、インドネシアでは特にキャンペーンを行っていないそうで、以前から五輪真弓「心の友」が国民的に支持されているように、穏やかな日本のポップスを受け入れる土壌が影響していそうだ。

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