歌心りえ、50歳を越え日韓で絶賛される人気歌手に 「諦めなかった人生」とさだまさしや本田美奈子.への熱い想いを語る
祖父の“マメな録音”が歌好きの原点、高校時代は弾き語りも
「小さい頃から童謡が好きで、中学では合唱部に入り、『翼をください』などよく歌っていました。ただ……うちの祖父がとてもマメで、ラジオの歌番組をカセットに録音しては、そのテープのインデックス部分にアーティスト名や曲名を全部書いていたんですよ。それをよく聴いていたので、特別誰かのファンというのではなく、いろんな歌を知るきっかけになりました。
その後、高校に上がると、長渕剛さんのバラード曲や、CHAGE and ASKAの『終章(エピローグ)』などを、ピアノの譜面で下手なりに(笑)、弾き語りしていました」
それにしても、テレビ番組で歌心が ♪笑ってよ、君のために~ と「道化師のソネット」を歌うと、多くの観衆が目を潤ませているのが感慨深かった。このフレーズに、心が解き放たれるのだろうか。彼女自身、どういった想いで歌っているのか尋ねてみた。
「笑うって、なかなか1人ではできないじゃないですか。テレビを観ていて笑うことはあっても、やっぱり人と人とが交わったなかで、何かを分かち合った時に、微笑んだり、笑っちゃったりすることが大事だと思うんです。だからコンサートでも、そんな気持ちで歌っていますが、お客様にも私の気持ちが伝わるのか、今では”待ってました!“という感じで拍手をしてくださるんです」
そして、アルバム『SONGS』収録曲の中でとりわけ反響が大きいのが、本田美奈子.「つばさ」のカバーだ。本田のオリジナルはオリコン最高62位、累計約5万枚と決して目立つ存在ではなかったが、彼女の逝去後、30秒のロングトーンなど高い歌唱力が評価され、大きな感動を呼び起こした名バラードである。
歌心は、日韓のオーディションを勝ち抜いた女性シンガーが対決するテレビ番組『歌ウマ女王日韓決戦』(フジテレビ系)で本作を披露し、最高得点を記録した。どうしてこの曲を選んだのだろうか。
「私は’95年にデビューしてから30年経った今、“歌心りえ”としてまたデビューできました。その幸せを噛み締めつつ、自分を含め、きっと誰しも“つばさ”を持っているし、みんなで大きくなっていきたいなっていう期待を込めて歌っています。美奈子.さんのロングトーンの部分は、私には再現できないと割り切っています。ただ、私なりに伸ばして歌って、そこからはフェイクを入れながらシャウトすることで、他の(穏やかな)楽曲にはない歌声の魅力が出せれば、という想いですね」
歌心の「つばさ」が大きな反響を呼ぶのは、何度もシャウトする様子が、この30年間、何度挫折しても諦めなかった歌手人生にも重なって聞こえて、聴き手の人生とも共鳴しているからであるような気がする。
次ページ:「日韓の架け橋になるような楽曲を」オリジナル曲の誕生秘話
[3/4ページ]

