過熱する「中学受験」で割を食う“受験しない児童たち” 小6秋に増える「学級崩壊」にも保護者からは「小学校では遊んでくれていたらいい」の声

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“中学受験をしない児童”が割を食う

 首都圏の場合、都立中高一貫校など、公立の学校を受験する場合は小学校での成績が持ち点となるため、小学校の授業も大事になってくる。ところが私立中学の受験は当日の入学試験が全てだ。子どもたちの方もそれを分かっているからか、学校の授業には身が入らない。

 机に顔を突っ伏して堂々と眠る子や、授業中にもかかわらず、後ろの席の子とおしゃべりに花を咲かせる子。思春期の入り口ということもあってか、小学校の先生をバカにする児童まで存在する。だがそういう子たちも塾ではおとなしく授業を受けているという。

 しかし、忘れていけないのは、どんなに受験率が高いと言われる小学校でも、受験をする子は7割から8割。つまり、残り3割から2割の児童はそのまま地元中学に上がるのだ。高校入試に向けての塾にすでに通い始めている家庭もあるが、中学受験をしない彼らにとっては、小学校の授業も大事な授業だ。学級崩壊が起り、一番割を食うのはこういう子たちだ。

 もちろん、担任教師の力量が関係ないとはいわない。昨年度の東京都の教員試験の受験倍率は1.7倍とかなり低い。教員の仕事は「ブラック」というイメージが先行するためか、採用試験の受験者が減っている。また、東京の場合、私立小学校も多くある。私立は転勤がないので、腰を据えた教育ができるという理由で私立学校への就職を希望する人もいる。さまざまな理由から、東京都の教員採用試験の倍率は下がってしまったようだ。倍率が下がれば、質の担保も難しくなる。

 中学受験を決めた家庭の中には公立校の教師の質の低さに辟易して、受験を決めたという家庭もあった。この女性の子どもが通う学校では、学期中にやるべき単元が終わらないという事態が起きたからだ。教師の力量への不信感が子どもを中学受験へと向かわせた。

 いずれにしても、受験に挑むのは12歳の子どもたちだ。受験に挑む子どもたちの努力は尊いものだが、その影響が学級全体の雰囲気にまで及んでしまうのは望ましい状況とは言えないだろう。親としてはわが子の学びを支えると同時に、学校生活を共に過ごす仲間への視線も忘れないことが大切だ。子どもたちが互いに安心して学べる環境を守ることは、受験を成功へと導く基盤にもなるはずだ。

宮本さおり(みやもと・さおり)
ジャーナリスト。地方紙記者、専業主婦を経てフリーランスの記者。子育て、教育現場、ワークライフバランスなどの分野を多く取材。『東洋経済オンライン』の連載「中学受験のリアル」が反響を呼び、東洋経済オンラインアワード2020「ソーシャルインパクト賞」を受賞。著書に『データサイエンスが求める「新しい数学力」』(日本実業出版社)、『中学受験のリアル』(インターナショナル新書)など。

デイリー新潮編集部

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