過熱する「中学受験」で割を食う“受験しない児童たち” 小6秋に増える「学級崩壊」にも保護者からは「小学校では遊んでくれていたらいい」の声
暑さが和らぐ秋になると、中学受験はいよいよ正念場だ。受験生家族のストレスは秋から冬にかけてピークを迎え、その影響は子どもたちの学校生活にも及ぶ。その一つが「学級崩壊」だ。授業中の居眠りやおしゃべりにはじまり、ストレスの矛先は教師に向かうことも。塾にばかりフォーカスされがちな「中学受験のリアル」を学校生活の側面からレポートする。
***
【図解】2025年の中学受験者数は5万人超!過去40年の受験者数の推移
中学受験を控える子どもたちにとって、秋から年末にかけての数カ月はまさに正念場となる。1月の埼玉入試を皮切りに、2月の東京、神奈川入試と順に受験本番が始まる。本番に向けて、模試や講習を重ねながら実力を固めていく大切な時期だが、この時期は同時に受験生とその家庭に大きな緊張をもたらす。
特に、日頃から成績のアップダウンが激しい子どもを抱える家庭では、志望校選びに頭を悩ませることも少なくない。夏期講習明けの模試で一気に成績を伸ばし自信をつける子がいる一方、逆に成績を落としてしまい大きな不安を抱える子も多くいる。秋を迎え、出願校の検討が具体化するにつれ、子ども自身も家族も「残された時間の少なさ」を実感し、精神的な負荷は増していく。
こうした状況で、中学受験をする子どもの割合が高い小学校では、学級崩壊が起こることがある。
都内でも中学受験率が高い地域に暮らす保護者のAさんも“違和感”に気づいた一人だ。学校から帰った子どもの話を聞いていると、秋からはクラスが落ち着かない雰囲気になったようで、「授業中のおしゃべりも多く担任も困っている様子」だったという。
「小学校では遊んでくれていたらいい」
東京ではここ数年、中学受験をする家庭の割合が高まっている。首都圏模試センターが東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の受験者数を調べた結果によれば、少子化による児童数の減少の影響で受験者数自体は減少している。それでも、過去40年間のデータで見ると、ここ数年の受験者数は高い水準をキープしている。Aさんのケースでは学年の6割から7割近くが中学受験をする状況だった。
最近は中堅校の人気が高く、倍率が跳ね上がることで従来ならば合格できる力をもっていたという子でも落ちるという現象も起きている。第一志望の合格を手にする子の割合は4人に1人と言われる中、過酷な現実を前に、本格的な志望校選びが始まる秋以降は、親も子も緊張が高まるのは当然だろう。塾では受験期の追い込みが始まるため、子どもは疲れもたまる。
6年生にもなると、夜遅くまで勉強する子も増えてくる。当然のことだが、塾の授業は夜にある。子どもたちは学校での一日を終えた後、塾へと向かい、夜9時近くまで授業を受ける。土日も特講や試験があるため、休日もゆっくり過ごすことがなかなかできない。大人でいうならダブルワーク状態だ。この状況で疲れが出ないはずはない。
都内在住のBさんの子どもが通った小学校では、担任教師が保護者会の度に「お子さんたちに疲れが見えます。しっかり睡眠時間を取ってください」と繰り返し話していたという。担任の話によると、朝から眠たそうな子が多く、授業中に居眠りをする子もおり、些細なことでイライラする子が多くなったというのだ。
その様子を聞いても、クラスの保護者たちの雰囲気は「仕方がない」というものだった。子どもの私立中学受験を経験した別の保護者はこう話す。
「小学校の勉強と中学受験は別ものですよ。公立小学校の教育にはあまり期待していません。小学校では友達と仲良く遊んでくれていたらそれでいいと思っています」
[1/2ページ]



