門脇麦、中島美嘉、多部未華子…女優たちが“吹き替えなし”で奏でた名作「音楽映画」5選【秋の映画案内】
驚異的な熱波に襲われた夏は過ぎ、秋が深まりつつある。日に日に日暮れが早くなるなか、もの悲しさを和らげてくれる存在として“音楽”を選ぶ人も多いだろう。
映画の世界では、これまで多くの音楽映画が作られてきたが、観るものを唸らせるほどの歌声や演奏はあまりない。また「これは吹き替えだな」と分かってしまうと、とたんに気がそがれてしまうこともある。しかし、その難題に果敢に挑戦した女優たちがいる。未経験の歌や楽器で、そのレベルを限界まで求めた姿は見逃せない。【稲森浩介/映画解説者】
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【写真】音楽のように流れる演技で魅了…「音楽映画」で輝いた女優たち
音楽が紡ぐ青春の物語
〇「四月は君の嘘」(2016年)
母の死をきっかけにピアノが弾けなくなった天才ピアニスト・有馬公生(山崎賢人)は、自由奔放なヴァイオリニスト・宮園かをり(広瀬すず)と出会う。公生は彼女の演奏や個性的な人柄に触れるうちに、再びピアノと向き合うようになるが、かをりは誰にも言えない秘密を抱えていた……。
最大の見どころはピアノとヴァイオリンが織りなす演奏シーン。特にかをりの情熱的な演奏スタイルの「かっこよさ」は見ものである。
「海街diary」(2015年)、「ちはやふる」(2016年)で一気にスターダムを駆け上がった広瀬。今作で吹き替えなしのヴァイオリン演奏に挑んだ。ゼロからのスタートだったため、半年前から毎日平均して2時間、多い時には4時間もの練習をこなしたそうだ。新城毅彦監督は広瀬を「完璧主義」と評しており、いくら練習しても納得せず「もう一回」と求めるほどだったと明かしている。
そんな広瀬がデビュー当時から憧れている女優が二階堂ふみだ。2014年のイベントで、「いろんな役をまったく違和感なく演じていて、素敵だなと思います。二階堂さんのように雰囲気を大事にしていきたい」と発言している。
広瀬と二階堂は、9月5日に公開された「遠いやまなみの光」でついに初共演を果たした。イギリスに住む悦子(吉田羊)が、1950年代の長崎にいた自分(広瀬すず)とそこで知り合った佐知子(二階堂ふみ)との過去を娘に語るという叙情的でミステリアスな物語だ。
この作品でメガホンを取った石川慶監督は、2人を「初共演とは思えないような阿吽の呼吸で、心地よいセッションのようだった」と評した。広瀬は「自分の中にある違和感のようなものが溶けるように、紐がほどけていくような感覚があった」と語っている。深く理解し合える何かがあったのかもしれない。
アイドル的なスタートだった広瀬だが、二階堂のような演技派女優を目指していることは間違いないだろう。
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