食が細くなった60代からの食事術 「残してもOK」「食べられない自分を責めない」

ドクター新潮 ライフ

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 酷暑続きがようやく終息したものの、夏バテで食欲不振になっている方も多いだろう。そもそも60歳を過ぎたあたりから食が細くなり体力減退は避けられない。どうすればよいか。そこでYouTubeで人気の料理研究家・管理栄養士の関口絢子氏が薦める「七つの黄金法則」を紹介しよう。

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 厚生労働省の調査によると、65歳以上の女性の22%、男性の約12%に低栄養傾向があります。さらに高齢者施設では、およそ3~4人に1人が低栄養のリスクを抱えているといわれています。

 その理由は、高齢化によって食が細くなっていることにあると思われます。それではどうすれば少食化による低栄養を防ぐことができるでしょうか。大切になってくる要素は七つあります。私はこれを「少食さんのための七つの黄金法則」と呼んでいます。まず、そのことから説明していきましょう。

(1)「罪悪感によるストレスで胃腸にダメージ」

 食が細く、少ししか食べられないことに対して罪悪感を抱かないようにしましょう、ということです。むしろ罪悪感がストレスになって、胃腸が余計なダメージを受けることになります。

 食事量が減るということは加齢による自然な変化です。食べなければという義務感、罪悪感によるストレスは食欲を落としてしまう原因になります。年を取ると、少量でもおなかがいっぱいになりますね。その分、内容で勝負して質の良いものを取るようにします。

(2)「栄養密度を意識する」

 少量しか食べられないのであれば、なるべく密度の濃い、栄養のあるものを選びましょう、ということです。

 カロリーベースで考えるよりは、タンパク質やビタミン、ミネラルなどを取るように食事の内容を見直していきます。もちろんカロリーはエネルギー源として必要ですが、それだけでなくタンパク質など体を構成するもっと重要な栄養素がありますので、そこを見落とさないようにしましょう。

 60歳以上の方ですと、生活の活動強度によっても違いますが、1日に1600~1700キロカロリーぐらい取れればいいと思います。ご飯など主食になるものを食べていれば、意外とそれなりのカロリーは取れています。

品数や量にとらわれない

(3)「吸収力を最大化する」

 食べる量が同じでも、なるべく吸収の良い食べ方をしましょう。消化吸収を助ける調理法とか、食材を意識して、食べた栄養をしっかり体に取り込めるようにしていきましょう、ということです。調理時によく切る、加熱する。また食べる時によくかむなど消化吸収しやすい状態を心がける必要があります。

(4)「品数や量を追わない」

 品数や量にあまりとらわれず、自分のペースで、好きな時に食べられる量を食べるということです。

 食事は1日に3回でなくても、2回でもかまいません。逆に、4回、5回と小分けにして取っても大丈夫です。やはり朝にきちんと食べた方が良い1日のスタートを切れるのですが、それでも食べたくない時に、苦しい思いをしてまで食べる必要はありません。

(5)「食べやすさ、のみ込みやすさを追求する」

 パサついたものや、喉の通りが悪くなったりするものを無理に食べるよりも、食べやすく、飲み込みやすいものを食べるようにしましょう。

 高齢になってくると、どうしてもかむ力、のむ力が衰えてきて、嚥下の力も徐々に衰えてきますので、工夫をします。例えばとろみをつけたおつゆにするとか、野菜も柔らかめに煮るとか。それによって消化吸収も良くなります。

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