食が細くなった60代からの食事術 「残してもOK」「食べられない自分を責めない」
栄養素を逃さない食べ方
(6)「栄養を守る調理術」
実は、やっちゃいけない、やるともったいないという調理の仕方がたくさんあります。
栄養を逃してしまう調理としては、野菜などをお水に何でもさらすとか、皮をむくとか、そういう調理法が常識化しています。水にさらすとビタミンCなどの栄養素が結構流れてしまったりするのです。お料理の本には、ゴボウやナスは切ったら水に漬けると普通に書いてありますが、そのときに出る黒色の成分は、コーヒーにも含まれるクロロゲン酸というポリフェノールで、血糖値上昇の抑制などに効果があります。そういうものを全部取り除いてしまう調理法は、栄養の損失が大きいのです。
いっとき、蒸した野菜、温野菜がはやりましたが、とても良いと思います。電子レンジなどを使って蒸し料理を作れば、野菜からいろんな成分が流れ出るということはありません。例えば、ブロッコリーは切ってゆでるよりも、蒸したりレンチンした方が栄養は失われません。ブロッコリーのような緑黄色野菜は、ベータカロテンと呼ばれる油に溶ける栄養素がありますので、マヨネーズやドレッシングなど、油と一緒に取った方が吸収は良くなります。
野菜はなるべく皮ごと食べた方が栄養はより多く取れます。皮には食物繊維がありますが、さらにナスやキュウリなど、外側が色の濃い野菜というのは、その外側が自分を守るための抗酸化物質をいっぱい蓄えているのです。それを全部むいてしまったらもったいないですね。
豚しゃぶは、余分な脂を落とすという点では良いですが、ビタミンB1が流れ出てしまうのでもったいない。だったら野菜の上にお肉を広げて蒸した方が栄養を取れます。
お魚の場合、お刺身で頂くのが、最も栄養が取れる食べ方です。その次が焼き魚。煮魚になると、栄養が煮汁に出てしまいます。
あと、微量栄養素である鉄分、マンガン、カルシウム、カリウムなどのミネラルも水にさらしたりゆでたりするとどんどん流れていきます。人に必要なミネラルやビタミンにはものすごい種類があります。それこそ何を取っているか分からないぐらい細かい栄養素がありまして、それでも取らなければいけないものをまとめて微量栄養素と言っています。そうした栄養素は、調理をすればするほど損失が増えていきますので、やはりシンプル調理で、栄養素を逃さない食べ方が少食の方にはお勧めです。スープやみそ汁は効率がよい食べ方ですね。
「かくれ低栄養」
(7)「無理のない食習慣の確立」
食習慣に絶対というものはありません。自分にルールを課さないで、もう食べられる時に、自分のペースで食べましょう。
毎日、絶対3食というのではなく、食欲をきちんと感じながら、そこでおいしく食べていけることを、一番念頭においてほしいと思います。3食にこだわらず、補食としてチーズやナッツ類を少し食べてもいい。自分の食べられる量で食事を取っていきましょうということですね。
以上が「七つの黄金法則」の基本的な考え方です。
ところで、高齢者に多い合併症の増加、回復力の低下、死亡率の上昇の最大の敵は「かくれ低栄養」なんです。これにより引き起こされるものの一つが免疫力の低下でして、風邪をひきやすいとか、何かけがしたら治りにくいとか、感染症にかかりやすくなってしまう。最悪の場合は病気の回復も遅れることになります。
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