食が細くなった60代からの食事術 「残してもOK」「食べられない自分を責めない」

ドクター新潮 ライフ

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タンパク質は毎食20~25グラム

 自分では食事の質が悪いと気が付かずに、病気ではないから健康状態は普通だと思っている方がいらっしゃるのですが、実は低栄養になっているため、徐々に虚弱に向かってしまうことがあります。それに気付かないで、ある日突然転んで骨折してしまう。そういう状況になる前に、自分が低栄養であるかどうかを認識する機会が必要だと思います。

 どうすればそれが分かるのか。例えば、いつも似たようなものばかりを食べている。料理が面倒臭くなって、毎回食卓に並ぶものが似通ってきてしまっている。あとは食事を抜くことが多くなっていたりする。または作り置きしておいて、毎回たくさん品数は並んでいるものの、もう、三度三度同じものを食べている。そういうことで栄養が偏り低栄養になってしまう場合があります。

 年を取ると、割と好きなものを食べるようになったり、なじみのあるものばっかり買ってきたりします。そうなると食事のバリエーションが減ってくる。知っていることだけをやりがちなので、新しい調理法とか食材に手が伸びず同じものばかり。また、空腹が満たされればいいみたいな傾向もあります。

 低栄養を防ごうと思ったら、栄養価の高いものを食べる必要があります。まず、1日の中でタンパク質を含む食べ物をどのぐらい食べているか把握することが重要です。タンパク質は毎食20~25グラムぐらい取る必要があります。タンパク質の摂取量が少ないと、筋肉が消耗されます。

 例えば体重が70キロある方ですと、1日70グラム以上のタンパク質が必要です。だいたい体重1キロ当たり1グラムが目安です。では、70キロの方がお肉を70グラム食べればいいかというと、そうではありません。お肉100グラムの中に含まれるタンパク質はその20%なので、お肉を100グラム食べると摂取できるタンパク質は20グラムです。そういうことを換算して一食あたりの量を取ってください。

残してはいけないと考えない

 ビタミンやミネラルも、低栄養状態を防ぐには重要です。野菜でもレタスとかタマネギなど白っぽいものばかり食べていると、足りない栄養素が出てきてしまいます。栄養価の高い緑黄色野菜は取れていなかったりします。意外と食べているようで、栄養素が十分取れていないというのは誰にでも起こり得ることです。

 量というよりは、質を考える。例えば、お昼が軽めであったら、夜はしっかり、お肉か魚といった食材を食べる。朝食にゆで卵や目玉焼きを食べればタンパク質が取れます。毎食でなく、1日の食事を通して帳尻が合えばよいのです。

 そこで、食べなきゃいけない、残してはいけないとは考えないことです。私も最近コース料理が全部食べられなくなりまして、そういう時に、シェフが見ていないすきに隣の人に食べてもらったりするのですが、残してはいけないというのは、食べられなくなった人には結構プレッシャーになってしまいます。

 それを無理して食べるとつらくなり、消化器官にも負担がかかって悪循環に陥ります。お腹が空いた時に食べればいいんだという気持ちでいることが大切です。

 メインの食事はお肉でもお魚でもどちらでもかまいません。お年寄りでお肉をガンガン食べるから長寿かといえば、必ずしもそうではありません。サシが入ったお肉なんて、もう食べられないですよね。そういうものを無理に食べる必要はなくて、お好きなもので栄養を補えばよいのです。

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