「なぜSOSに気づけなかったのか」息子が9歳の頃“2つ年上の男の子”から「性暴力」の被害に 息子を守れなかった母親が抱える自責の念
9歳の頃、一緒にスポーツをしていた2歳年上の男児から性暴力を受けたことが原因のPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいる23歳の男性がいる。昨年まで被害を知らずに一緒に暮らしてきた母親はショックを受け、自分も精神を病んでしまった。(全3回の第3回)
第2回【「無理やりトイレに連れ込まれて10分以上激痛が…」 9歳の頃“2つ年上の男の子”から受けた「性暴力」から23歳男性が今も立ち直れない理由】からの続き
***
【写真を見る】9歳の頃のAさん。こんな小さな体で性被害を受けていた
変わり果ててしまった息子
突然、平穏だった日常生活は瓦解した。昨年3月下旬、午前7時頃。会社に出勤しようと2階から玄関へ向かおうとした時、息子のAさん(23)が自室から這い出てきて、ズボンの裾を掴んだ。
「苦しい…助けて…」
息子はやつれた顔でこう助けを求めてきた。息子は数日間、ずっと部屋に閉じこもっていた。春休み中だったので自由気ままな大学生活を謳歌していると思っていたが、その間、抜き差しならない問題に直面していたようだった。だが、何に悩んでいるのか聞いても答えようとせず、「弁護士を探してほしい」を繰り返す。
それから3日くらいかけて、息子は悩みの原因を語り始めた。
9歳から10歳にかけて2年間、スポーツ練習場に一緒に通っていた2つ年上のBから2年間、性暴力を受けていた。練習場や温泉施設のトイレに無理やり連れ込まれて、性器を舐めさせられたり、性器を挿入されたりした被害が10回以上あった。ずっと心に封印してきた過去だったが、ジャニー喜多川氏の性加害報道を目にしたことがきっかけで、当時の記憶が蘇り、フラッシュバックに苦しんでいるーー。
つきっきりで看病することに
告白を受けた時の衝撃を母親はこう振り返る。
「卒倒しそうになりました。Bから殴る蹴るのいじめを受けていたことは知っていました。それが原因で引っ越すことになったので。でも、まさか性暴力まで受けていたとは思いもよりませんでした」
それから母親は息子につきっきりの生活を送らねばならなくなった。精神科に連れていき、Bに謝罪を要求するため弁護士にも相談。息子は「死にたい」と訴えてくることも多く、少しでも目を離すのが不安になった。大学に一人で通えなくなってしまったため、今年の春先までは車で送り迎えもした。
下記の記述は、母親が、精神科医に報告するために、息子が話したことや病状について日記にまとめたものだ。
〈12月16日 体にすごい痛みがあった 引き裂かれるような痛み 錆びた包丁でぐじゃぐじゃに裂かれるような痛み 一回挿入に10分間くらい(体感で)無理矢理されていた 性器や指につけた精子をなめさせて吐き気がしてウェッとなった〉
〈11月6日 帰宅後すぐごめんなさい、わたしをすごく傷つけてしまった。本心じゃなかった 普段の自分じゃなかったと謝ってくれる。別の自分になっていたように思う。きちんと治療を受ける (わたし)振り返ってとても反省した いつも自分のことばかりだった。本当ならAの苦しい気持ちを丸ごと受け止めてあげなければならないのにできなかった〉
[1/2ページ]


