「無理やりトイレに連れ込まれて10分以上激痛が…」 9歳の頃“2つ年上の男の子”から受けた「性暴力」から23歳男性が今も立ち直れない理由
競技連盟も事態を把握して動き出した
Aさんはこの面談で一歩前進したと思ったが、結果は違った。
「それから1カ月経っても何もリアクションがない。結局、こちらの弁護士から向こうの弁護士に再確認すると、面談の場での謝罪は『脅されて言った発言だった』とすべてひっくり返されてしまいました。その後も彼は競技を続けSNSにアップし続けていました」
このタイミングで思わぬ動きが出た。母が別居しているAさんの父親に初めて一連の経緯を打ち明けたところ、父親が怒り出して、競技連盟やBのスポンサー企業に被害を訴え対応を求めるファクスを送ったのである。
「Bの弁護士からは『名誉毀損にあたる』と逆に訴訟をちらつかされることになりました」
一方、競技連盟は事態を重くみて動き出した。双方の聞き取りに入り、Aさんも母親と一緒にzoomで聴取を受けた。その後競技連盟からは、Bが聴取で「殴る、蹴る等の行為」「性器を触った」「自分の性器を舐めさせた」の3点については認めたとして、事態が解決するまでBの選手活動を一時的に制限するとの報告が届いた。
その後昨年11月頃になるとBのSNSの更新が止まり、Bの弁護士は700万円で示談にしたいと申し入れてきた。今年の3月から示談交渉が再開したが、今も解決には至っていない。
「向こうが提示した示談案で加害行為として謝罪したのは、競技連盟の聴取で認めた3点のみ。挿入行為については絶対に認めようとしない。僕が受けた被害はそんないたずら程度の話ではなく、心が破壊される行為でした。それでは真の謝罪にならないと示談を断りました」
この間、警察にも刑事事件化できないかと相談した。
「刑事さんは自宅まで来て真摯に話を聞いてくれました。ただ、証拠うんぬん以前の問題として、当時12歳だった未成年者の犯罪を問うことはできないと言うのです」
加害者は取材に「少し考えたい」
すでにPTSDを発症してから1年以上が経過しているが、症状は良くならないままだ。今もフラッシュバックが起きるたびに、母親に「死にたい」とせがんだり、拳に血が滲むまで床を叩いたり、家の中の物を壊したりする修羅場が続く。
「母も私につききりになるうちに精神を病んでしまい、仕事を休職して精神科に通院している状況。取材を受けたのは、僕の苦しみを世間に少しでも理解してほしいという一心です。性被害を受けた当人にとっては、幼少期の出来事であったとしても消えない傷なのです。裁判を起こすことも検討していますが、さらに問題が長期化することを考えると躊躇しています」
Bのことは「絶対に許せない」と語る。
「こちらとしては最初の段階から、未成年の時にやった行為だということを考え、彼が自分のやった行為をきちんと謝罪すれば、受け入れ、競技を続けることも認めるつもりだったのです。彼は連盟が管轄していない大会に今年に入っても出場し続けています。今となっては、彼が競技を続けていくことも許せません」
競技連盟に取材を申し込んだところ、「本件は、今から13年以上前のご本人方の幼少期における事実の有無に関する事案で、当連盟の手続きの対象外であり、現在、当事者間の解決を待っている状況のため、本件に関する回答は、控えさせていただきます」との回答だった。
B氏にも弁護士を通して取材を申し込んだが、「(取材を受けることは)簡単に決められないのでもう少し考えたい」との返答だった。
第3回【「なぜSOSに気づけなかったのか」息子が9歳の頃“2つ年上の男の子”から「性暴力」の被害に 息子を守れなかった母親が抱える自責の念】では、母親の目線でこの問題について取り上げる。
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