「お前の親の顔が見たいよ」「同じ親だろ」と言い合って… 「ビリー・バンバン」菅原進さんが振り返る兄の“素顔”【追悼】

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「いいちこ」CMで第一線に

 76年、解散。話術に長けた孝さんはテレビ番組の司会者として重宝された。進さんはソロ歌手、作曲家として実力を発揮するが、重いぜんそくを患う。

「心配したおふくろが僕の様子を見に行くよう兄に頼んだ。兄は1日だけの復活コンサートの話も持ってきました」(進さん)

 84年、再結成に至る。その後のビリー・バンバンは麦焼酎「いいちこ」のCMソングで注目を集めた。2007年に使われた「また君に恋してる」は特に反響が大きく、坂本冬美さんがカバーしてさらにヒットした。

 音楽評論家の増渕英紀さんは思い返す。

「過去の人にならず『いいちこ』のCMで再び第一線に。新しいファンも増えた。デビュー以来、透明感のある声のイメージが全然崩れていないのは驚きです」

「兄貴が隣にいなくなって、歌う雰囲気がつかめない」

 新たな成功の陰で孝さんは80年代、親しい人物にだまされて連帯保証人になり、1億円以上の借金を背負う。

「兄は純粋過ぎた。でも自分の責任だからと周囲に頼らず、乗り越えた」(進さん)

 14年、兄弟はそろって病に襲われる。進さんに進行した大腸がんが見つかり、孝さんは脳出血で倒れた。左半身にまひが残ったが、車椅子に乗り翌15年に復帰。

「兄は真面目で頑固。信念を貫く。自らを追い込むほどリハビリに励んだ。着替えに約1時間かかっても一人でやる」(進さん)

 19年、デビュー50周年の全国ツアーを敢行。孝さんの車椅子を進さんがそっと押していた。昨年も「いいちこ」のCMソングである新曲を収録したが、年末に入院した。9月11日、肺炎のため、81歳で逝去。

「口げんかの時、“お前の親の顔が見たいよ”“同じ親だろ”と言い合い、笑って収まることがありました。両親は最大の応援者で、兄弟仲に気を配ってくれた。お互い大きな病気をして相手を深く思いやる心が生まれたのか、兄弟だからこそ長く続けられたのだと分かってきた。兄貴が隣にいなくなって、歌う雰囲気がつかめません」(進さん)

週刊新潮 2025年10月9日号掲載

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