初のわが子誕生に動揺しすぎて「不倫しちゃった」夫 産後の妻が一喝しても2度3度…歪んだ心理の裏にあるもの
「やらかし」は1度で終わらず…
だがその後も、峻也さんは「やらかして」しまう。30代では2年つきあった彼女と別れる際に揉め、彼女が自宅に来てしまうという事態になった。そのときも友佳子さんは玄関に仁王立ちになり、「あなたがどうしてもうちの夫と一緒になりたいというなら離婚してもいいけど、あなたたちが生活を送れないほど慰謝料を請求しますよ」とすごんだ。
「相手が怯むのを見て、友佳子は『ほら、しょせんその程度の愛情なんでしょ』と淡々と言っていました。妻は最強だと思いましたね。そのころはひとり息子も小学校に入っていたのですが、妻は『子どものためにいい父親でいろ』というようなことは言わなかった。ただ、『どうせなら命がけになるような恋をしてみなさいよ』と言われました」
40代前半、またも不倫が妻にバレた。そもそも峻也さんがバレるような言動をとるからすぐにわかってしまうのだ。急に帰宅が遅くなったり外泊したり、変な嘘を重ねたり。妻にバレるとホッとするという妙な心のメカニズムが働くのだと彼は言う。
「40代のときは相手が20歳も年下だったから、彼女のわがままを叶えてあげるのがうれしくて入れ込んでしまった。バレて彼女に別れようと言ったら、彼女が『死んでやる』と言いだして、僕がパニックに陥ったんです。妻はわざわざ彼女の部屋に行ってくれて、諄々と話をしたそうです。そのときは脅すような態度はとらず、彼女を説き伏せた。帰宅してから『仏の顔も三度だからね』『あんな若い子と関係をもつなんて罪だよ、かっこ悪い』と言われました。いつか友佳子に捨てられるかもしれないと僕も危機感を覚えたくらいです」
いちばん安心するのは妻、だからこそ…
妻に3度まで尻拭いをさせてしまったのは忸怩たる思いがあると彼は言う。だが、彼はそこに満足感を得ているのではないだろうか。自分のために妻が力を尽くしてくれること、見捨てないでいてくれることが、彼の安心感につながっているような気がしてならない。彼は妻の愛情を無意識に試しているのかもしれない。愛を与えることも受け取ることも、彼の習性からは遠いところにあるのではないだろうか。
「どうしたら妻といい関係をもてるのか。不倫をしなければそれでいいのか。僕にはわからないんですよね。相手の女性のことはみんな好きだったし、一緒にいると楽しいんだけど、僕がいちばん安心するのは妻。それがわかっているからこそ、不倫してしまうのかもしれない」
安心して妻のもとにいるために、彼は不倫を繰り返すのだろうか。彼の不安定な、心を封印するような生活を送っていた過去がそうさせるのだろうか。そのあたりは彼にもわからないという。
次はないからねと妻に言われているにもかかわらず、数ヶ月前から彼はまた新たな女性になびいている。風が吹いたら泳ぎ出すこいのぼりのように彼はふわふわと浮いたように行動する。
「友佳子に見限られたら本当に生きていけないと思う。わかっているのに、どうしてこういう行動をとってしまうんでしょうか」
そう言いつつ、どこか深刻さはない。もしかしたら、この現実感のなさが、彼の魅力につながっている可能性もありそうだ。
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峻也さんの妻への態度には、どこか「甘え」に似たものを感じさせる。それはやはり幼少期の母との関係が影を落としているのかもしれない。【記事前編】では、その半生をたどっている。
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