初のわが子誕生に動揺しすぎて「不倫しちゃった」夫 産後の妻が一喝しても2度3度…歪んだ心理の裏にあるもの
母と妹は…
結婚を決めてから、疎遠になっていた母親に連絡をとってみた。だが母は「あら、そうなの。おめでとう」と言うだけで、ほとんど興味を示さなかった。一方、妹はシングルマザーとしてたくましく生きていた。あんな家庭環境で、しかも妊娠してすぐ相手が行方をくらましたのに絶望することなく出産、その後は生活保護を受けながら暮らしていた。子どもが1歳になるころ仕事を始め、その後は高卒認定をとるために独学で勉強するなど、かなりがんばっていたようだ。
「ごくまれに連絡を取り合っていた妹は、心から結婚を喜んでくれて……。29歳のときに結婚したんですが、姪っ子はもう10歳になっていました。妹とその娘の関係は、完全に友だちみたいでおもしろかった。妹は自らそういう関係を構築したんでしょうね」
妻となった友佳子さんは早くに母に死なれ、男手ひとつで育てられた。父はいつでも彼女の味方で、ひとり親ではあったが「愛情はたっぷり受け取った」そうだ。
妻の妊娠に落ち着かず…
ふたりの結婚生活はそれぞれが仕事中心となった。子どもをどうするかという話し合いはしていなかった。彼は自然に任せればいいと思っていた。
「それが結婚して半年ほどたったところで、友佳子が妊娠したって。子どもができたのよと言われて、どういうリアクションをしたらいいか迷いました。友佳子は笑って『いいのよ、素直に言いたいことを言ってみて』と。『言葉が出ない』と伝えました。喜ぶべきなのはわかっているけど、素直に喜べない。友佳子には僕の生育歴をほぼ話していましたから、彼女は『あなたはきっと困惑すると思ってた』って。でもそれでいいと思うよ、これから徐々に何か感じてくれればいいと言ってくれた。そういうところが彼女のすごいところです」
妻のお腹が大きくなっていく。エコーの写真を見たり胎動を聞いたりしながら、彼は少しずつ「命が育っている」と実感した。だが出産日が近づくにつれ、落ち着かない気持ちになっていった。妻がどっしり構えているのが信じられないくらいだった。
「それで出産予定日の数日前に、よく行くバーで顔見知りになった女性と関係をもってしまった。わけわからないですよね。自分でも何をやっているんだろうと思った。彼女とは出産前後に数回、会いました。子どもが生まれたばかりなんだと正直に言ったら、私とは遊びだったのねと言われて、そういうことじゃないと……。結局、なんだか揉めてしまって、彼女が自宅に電話をかけてきて友佳子が出ちゃって」
そのときの友佳子さんは、落ち着いた、どちらかといえばドスの効いた声で「あなたは既婚者と知っててつきあったんだから、私が慰謝料を請求できるんですよ。困るでしょ。この人からは手を引いたほうがいいわよ」とすごんでみせた。退院して帰宅してからわずか1ヶ月後のことだった。
「電話を切った友佳子は、『あなたもね』と僕を見た。夫の浮気に怒るでもなく悲しむでもなく、淡々と浮気相手を蹴散らした友佳子はなんだかかっこよかった。ありがたかった。『遊びか本気か知らないけど、妻にわからせるようなことはしないで』と言われたので、謝るしかありませんでした」
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