妻に「ママ」を求めてしまう哀しき50歳夫 原因は“親失格の実母”と“バイト先の女将”のせいなのか
【前後編の前編/後編を読む】初のわが子誕生に動揺しすぎて「不倫しちゃった」夫 産後の妻が一喝しても2度3度…歪んだ心理の裏にあるもの
日本の男性は妻を母親のように思っている人が少なくないと、よく言われる。男には3人の「ママ」が必要で、「実母、飲み屋のママ、そして妻」がそうだという説もある。女性と対等なパートナーシップを築くより、恋人や妻を「母」にしてしまうほうが楽なのかもしれない。
【後編を読む】初のわが子誕生に動揺しすぎて「不倫しちゃった」夫 産後の妻が一喝しても2度3度…歪んだ心理の裏にあるもの
今になって考えると確かにそうかもしれないと、高藤峻也さん(50歳・仮名=以下同)はつぶやくように言った。
「そばに女性がいないと落ち着かない。たとえばAさんとデートするはずだったのにドタキャンされたら寂しくなって、その場でBさんに連絡して誘っちゃう。Aさんへの当てつけじゃないんです。寂しいから誰か一緒にいてほしいと思うだけで……。大人なのにバカみたいと言われたこともありますが、こういうのって性格的なものだからどうしようもないんじゃないでしょうか」
峻也さんはふっと上目遣いにこちらの顔色をうかがう。同意してくれるかどうかが不安のように見える。
峻也さんが育った家庭
「僕は母親からネグレクトされていたんです。でもそれを周囲に知らせたくなかった。母にかわいがられていると妄想しながら、小学校では母と仲がいいように装っていました。うちは僕が小学校に上がるときに両親が離婚、母は実家から援助を受けながら生活していました。でもめったにごはんも作ってくれなかったし、2歳下の妹のことは僕に押しつけて自分は日が暮れると飲みに行ってしまう。いつもテーブルに千円札が置いてありました」
妹を連れて近所の商店街へ行き、惣菜やごはんを買った。おかあさんはどうしたのと聞かれると「お仕事が忙しいんだ」と庇った。隣近所の主婦が心配して見に来ることもあったが、そんなとき彼は玄関をそっと開け、「今日はおかあさんがごはんを作ってくれてる」とか「おかあさんは風邪ひいて寝てるの」とか、適当な理由をつけて母がいることを強調した。
「実際、母がいることもあったけど、そういうときの母は酒を飲んで寝てました。離婚が母を変えてしまった」
大人になってから、父がかなり女性にだらしなかったこと、逆に母は潔癖なまでに道徳や倫理観に厳しい人だったと知った。だが離婚してからの母は、完全に「壊れて」おり、子どもたちを教育できるような人間ではなくなっていた。
「母は実家から経済的な支援は受けていましたが、両親はうちに来たこともなかったから関係としては疎遠だったんでしょうね。母とその両親がどんな関係だったのか、僕はよく知らないんです」
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