「妊婦の腹を切り裂いて胎児を取り出す場面も…」 日本を徹底的に悪者に描く反日映画「731」 その無茶苦茶な内容とは
収容所の廊下で花魁道中
本作にはなぜか絢爛(けんらん)に着飾った日本人女性も登場。
「何の脈絡もなく唐突に、収容所の廊下で花魁道中が始まるのです。しかも、付き人があんどんや番傘まで持っていて、かなり本格的。収容所の捕虜たちも驚いていましたが、観客の私も驚いてしまいました。あれは一体、何だったのか」(前出のジャーナリスト)
劇中での説明は一切なかったという。軍への慰安訪問か、それとも捕虜に日本の文化を見せつける深謀か。よく分からないが、トンデモ演出はさらに続く。
「中庭で捕虜たちに綱引きをさせ、負けた方が処刑されるというシーン。刑場の脇では、ちょんまげに白装束の男たちが三味線を弾いているんです。何だかカオスな状況でした」(同)
いやいや、それにしても機密性の高い731部隊に花魁やら三味線弾きやら、民間人が出入りし過ぎではないかと心配にもなる。
「世界征服」計画
物語の中盤以降、主人公らは脱獄しようと模索する。
「日の丸に『必勝』と書かれた鉢巻きを頭に巻き、ふんどし姿になった日本兵が脱走を試みる捕虜を止めようとし、取っ組み合いになる一幕もありました。それはもうシュールでした」(前出のジャーナリスト)
緊迫する現場にそぐわないほど誇張された日本文化の数々。出来の悪いパロディーとしか思えないが、
「悪事に及んだのが日本人だと強調したいがため、過剰に“日本の要素”を詰め込んだのでしょう。日本文化それ自体に嫌悪感を抱かせたいという意図もあるのかもしれません」(西谷氏)
また終始、731部隊長の石井四郎中将を象徴的で分かりやすい“悪”として描くのも特徴だ。
終盤、石井中将はこんなセリフを呟く。
〈世界征服の計画はまた一歩前進した。近いうちに自由の女神、万里の長城、モスクワの赤の広場、パリのエッフェル塔、ことごとくわが支配下に置かれよう〉
ご満悦の表情で「はっはっは」と哄笑(こうしょう)し、いかにも秘密結社のボスといった風情だ。実際に世界征服なるものまで企んでいたのか、その点は戦後の研究に見当たらず、もはや本人に聞かねば分からないが、
「中国政府は日本軍が世界征服を企んでいたと学校で教育しています。反日映画に出てくる日本軍は必ずと言っていいほど世界征服を口にするんです」(西谷氏)
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