74歳で挑戦した小説が15万部のベストセラーに 映画監督で作家の松井久子さんが明かす成功の秘訣と「70代の性をテーマにした理由」

エンタメ

  • ブックマーク

76歳で89歳の夫と再婚

 デビュー作は版を重ねた。読者には男性が一定数いるというのも興味深かった。

「年を取って、“男”でなくなった、“女”でなくなったと思いたくないってことなんです。みんなときめきを求めているんだって」

 その後、松井さん自身がときめく展開が待っていた。

 次作で「老い」をテーマに書く取材過程で、思想史家の子安宣邦さんと知り合うのである。そして翌22年に結婚。子安さん89歳、松井さん76歳。ともに再婚だ。

「少女時代“よき妻、よき母になれ”と親に教えられました。でも私は離婚した。今度こそよき妻になれと神様に言われている気がしたんです。(子安)先生は無理なくそう思わせてくれた。この人にいかに元気で長生きしてもらうか。それが私の使命だと思えたんです」

 2022年、二人をモデルにした2作目『最後のひと』を出版。アンサーソングのような形で子安さんが今年10月に『生き直し』を上梓する。

 松井さんは今後、老いの結婚生活を送る中で湧いてきた問題意識から、作品を書いていくかもしれない。

第1回【「浜田雅功さんも“俳句なんてつまんねー”と思っていたはず」 56歳でブレイクした夏井先生が明かす、俳句に捧げた人生】では、56歳で「プレバト!!」(TBS系)に出演しブレイクした夏井いつきさんに、俳句に捧げた人生について語ってもらった。

第2回【61歳で紅白初出場の歌手・秋元順子さんが明かす「奇跡を起こせた理由」 結婚、子育てを機に歌手活動を封印した過去】では、61歳で紅白歌合戦に初出場し、紅組初出場歌手最年長記録を更新した、歌手の秋元順子さんに「奇跡を起こせた理由」や波乱万丈な半生について明かしてもらった。

西所正道(にしどころまさみち)
ノンフィクション・ライター。1961年奈良県生まれ。京都外国語大学卒業。著書に『東京五輪の残像』『「上海東亜同文書院」風雲録』『絵描き 中島潔 地獄絵1000日』など。

週刊新潮 2025年10月2日号掲載

特集「『あんぱん』やなせたかしさんだけじゃない 『アラ還』でブレイクした女性たち」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。