朝ドラ『あんぱん』終了でも快走はつづくか…アンパンマン列車25周年 JR四国“集客の切り札”

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『それいけ!アンパンマン』の作者・やなせたかし夫妻をモデルにしたNHK連続テレビ小説「あんぱん」が最終回を迎えた。

 アンパンマンは子供に絶大な人気を誇る国民的キャラクターになっているが、それをモチーフにしたテーマパークも宮城県仙台市・神奈川県横浜市・三重県桑名市・兵庫県神戸市・福岡県福岡市など全国に5館ある。

 どのミュージアムも家族連れを中心に盛況でとなっているが、それら子供を対象にした5館と趣が異なるミュージアムが高知県にある。それが、香美市のアンパンマンミュージアムだ。

 同館は、ほかの5館とは異なり館名に“こども”がつかず、隣接する別館と詩とメルヘン絵本館の3つで「やなせたかし記念館」として構成される複合施設となっている。

 また、同館の目の前には『それいけ!アンパンマン』に登場するだだんだんの巨大像が立ち、隣接する公園にもアンパンマンやジャムおじさんなどの像、バイキン城を模した遊具などが設置されている。

 アンパンの世界に没入できるのはミュージアム周辺だけではない。最寄駅となるJR土讃線の土佐山田駅は駅構内にアンパンマンが描かれ、駅前の観光案内所もアンパンマン一色に染まっている。駅からミュージアムまでを結ぶバスは、車体も車内アンパンマンづくしの装飾が施されている。

 四国、とりわけ高知県は「あんぱん」の舞台になったことを機に、アンパンマンを観光の目玉にしようという機運は高まっている。しかし、それ以前から地域活性化や経済効果を狙って盛んにアンパンマンが用いられてきた。

「あんぱん」放送、広がるアンパンマン列車の3世代利用

 特にアンパンマンを集客や地域活性化に用いてきたのがJR四国だ。同社は2000年に土讃線でアンパンマン列車を運行させ、今年で25周年を迎える。

 アンパンマン列車は運行開始から25周年を迎え、それを記念して初代アンパンマン列車も復刻。復刻したアンパンマン列車は、高知駅―中村駅・宿毛駅で運行している。

「アンパンマン列車は、もともと子供連れの家族に人気の列車でした。『あんぱん』が放送されたことで、年配者が香美市のやなせたかし記念館へ足を運ぶようになっているようですが、アンパンマン列車も祖父母・父母・孫の3世代で乗車するという利用が広がっているようです」と説明するのはJR四国の営業部の担当者だ。

 土讃線で運行を開始したアンパンマン列車が好評だったため、翌2001年には香川県の高松駅と愛媛県の宇和島駅とを結ぶ予讃線にもアンパンマン列車が登場。さらに2002年には、徳島県の徳島駅と阿波池田駅間を走るゆうゆうアンパンマンカーも運行を開始した。

 矢継ぎ早にアンパンマン列車が拡大していったが、JR四国は本州から観光客を呼び込むことを目的に2006年から瀬戸大橋アンパンマントロッコも走り始めた。

 同列車はJR四国の観光列車だったが、東日本大震災のときには東北の復興を後押しする名目で東北本線・気仙沼線・石巻線・大船渡線・山田線・常磐線・水郡線などを2012年に周遊して被災者たちを元気100倍にしている。

 このように、JR四国管内では歳月の経過とともにアンパンマン列車の運行範囲を広げていった。そして、JR四国は「あんぱん」終了後も攻勢を緩めない。

「今年10月からは、高松駅―徳島駅間を結ぶ高徳線でもアンパンマン列車を運行します。高徳線には昨年までアンパンマン列車が運行されていたのですが、ダイヤ改正の影響でアンパンマン列車が運行できなくなっていたのです。そのため、沿線の自治体や住民などから『アンパンマン列車を走らせてほしい』という要望が多く寄せられました。そうした要望に応えるべく、アンパンマン列車の運転を再開することに決めました。高徳線でアンパンマン列車が再開することで、JR四国管内で特急が走っている全線区でアンパンマン列車が走ることになります」(JR四国営業部担当者)

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