朝ドラ『あんぱん』終了でも快走はつづくか…アンパンマン列車25周年 JR四国“集客の切り札”
「アンパンマン」だけではない
ここまでアンパンマンに注力しているので、JR四国の観光列車はすべてアンパンマン列車という印象を強くしてしまうが、JR四国はアンパンマン列車以外にも多種類の観光列車を走らせている。
高知県の若井駅と愛媛県の北宇和島駅間を結ぶ予土線では、新幹線を模したホビートレインが2014年から運行を開始した。旅客列車を走らせているJR6社のうち、JR四国だけが新幹線を走らせていない。新幹線を模したホビートレインは、そうした状況を逆手に取った観光列車でもある。
そうしたユニークな観光列車が走る一方で、松山駅―伊予大洲駅・八幡浜駅間を発着する伊予灘ものがたりはラグジュアリーな車内空間で豪華な食事を味わえるという本格的な観光列車となっている。
伊予灘ものがたりが走る予讃線には、下灘駅という海に面した無人駅がある。下灘駅は青春18きっぷのポスターにも採用されたことがあるほど、その風景は美しい。鉄道ファンの間では知られた駅だが、近年はインスタ映えすることが評判になって鉄道ファン以外の訪問客が急増している。
「訪日外国人」取り込みに課題
JR四国は観光客を呼び込むべく列車に工夫を凝らしたり、何でもない場所を観光スポットへと変えたりといった工夫を重ねる。ただ、残念ながらJR四国の努力は数字になって現れていない。特に大きな課題になっているのが、訪日外国人観光客の取り込みだ。
新型コロナウイルスの感染拡大で消失したインバウンドは、すでにV字回復を遂げている。2024年の訪日外国人旅行者数は約3,686万人に達し、これは2019年の約3,500万人を上回って過去最高記録となった。また、2024年における訪日客旅行客の消費額も約8.1兆円となり、過去最高を記録している。
昨今、オーバーツーリズムによって生じる諸問題が指摘されているが、その一因は訪日外国人観光客が偏在していることにある。外国人観光客の多くが東京・京都・大阪を訪問・滞在している一方、地方都市には外国人観光客の恩恵が少ない。そのため、地方都市の政財界関係者からは、もっと外国人観光客を増やしたいという声が漏れる。
地方都市は目立った産業が乏しく、人口減少。少子高齢化が待ったなしの状態にある。そのため、地域活性化・経済振興をインバウンドにすがろうとする気持ちは理解できる。
他方で、地方に外国人観光客を分散することで、大都市に偏重していた外国人観光客は平準化される。それは大都市圏で問題視されているオーバーツーリズムを緩和することにつながる。
観光庁などは地方都市の魅力を発信し、外国人観光客は少しずつ北海道・東北・中国・九州など各地方都市にも目を向けるようになった。
しかし、四国では外国人観光客の消費額が2019年比で約10.2パーセント増加しているが、入り込み者数が約15.5パーセントダウンしている。四国はインバウンドの取り込みが成功していない。
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