朝ドラ『あんぱん』終了でも快走はつづくか…アンパンマン列車25周年 JR四国“集客の切り札”

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JR四国の策「4S STAY」

 こうした中、JR四国は観光客を呼び込もうと“4S STAY(フォースステイ)”というブランドで展開する簡易宿泊所の事業に力を入れ始めた。

「JR四国は2018年に京都で最初の4S STAYをオープンさせました。最初に京都を選んだ理由は、京都に宿泊した外国人旅行者を四国に呼び込むことを意図していたからです。しかし、当時はノウハウがなかったことや京都から四国まで距離が遠かったことなどから運営がうまくいかず、撤退することになりました。その後、徳島県三好市の阿波池田駅前に開業した4S STAYは順調です。阿波池田は四国のへそとも呼ばれる要衝地のため、四国旅行の際には宿泊地としては利便性の高い都市といえます。

 ところが阿波池田駅の周辺は宿泊施設が少なく、観光客をうまく取り込めていませんでした。そうした事情から、阿波池田駅の近隣に4S STAYを開業することになりました。現在、阿波池田駅には3つの4S STAYを展開しています」と話すのはJR四国事業開発本部の担当者だ。

 JR四国は今年9月に香川県さぬき市に、10月にも高松市に1店舗をそれぞれ4S STAYをオープンさせた。阿波池田駅で培ったノウハウは確実にJR四国を成長させている。

 4S STAYは古民家を改装した簡易宿泊所だが、これもJR 四国らしい現状を逆手に取った取り組みになっている。

「現在、四国は空き家や空き店舗の増加が深刻な社会問題になっていて、多くの自治体が頭を悩ませています。そうした社会課題を解決すると同時にインバウンドの宿泊需要を増加させる事業です。JR四国は空き家等再生事業に四国内で拡大していく考えから、2030年度までに4S STAYを約20店舗まで増やすことを目指しています」(JR四国事業開発本部の担当者)

 JR四国は、そのほかにも愛媛県西条市でサーモンの陸上養殖に取り組むなど鉄道事業以外の収益源を新たに生み出そうと試行錯誤している。

 昨今、JR四国に限らず地方の鉄道路線は例外なく苦しい状況に追い込まれている。大都市圏でも鉄道事業より不動産に傾斜する鉄道事業者が増える中で、JR四国はアンパンマン一本足打法から脱して多角化を模索する。

 果たしてアンパンマンを超える新たな目玉を生み出し、ローカル線の新たなモデルを示すことはできるのか?

小川裕夫/フリーランスライター

デイリー新潮編集部

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