台湾有事を正面から描いたドラマ「零日攻撃」が話題…“台湾人になった元日本人”が中国人民に「台湾侵攻」についてのホンネを尋ねると
台湾では8月2日から、台湾と中国の戦争を題材にしたドラマ「零日攻撃(ZERO DAY ATTACK)」が地上波や各配信サービスなどで始まった(日本では8月15日からアマゾンプライムビデオで配信中)。日本からも高橋一生、水川あさみらが出演するなど国際色豊かなドラマだ。【広橋賢蔵/台湾在住ライター】
【写真】政治的な緊張状態が続く一方、中国大陸で台湾人は意外なほど“優遇”されているという。中国国内を自由に行き来できる「台湾同胞証」の実物写真も
総統選に勝利した後、周囲に蠢く中国の工作に直面する女性政治家。政府に不満を抱き、中国が指導する地下スパイ組織に加入する台湾人青年。諜報戦に巻き込まれていくメディア関係者や女性インフルエンサー。各話ごとに主人公が変わる群像劇の中で、一貫しているのは「攻撃はすでに始まっている」というメッセージだ。
どれも現在台湾が抱える社会不安を扱っている。「ゼロデイ攻撃」とはもともとIT用語で、発見されたシステムの脆弱性に対策が施される前に行われるサイバー攻撃を指す。
ドラマの評価は、支持政党や政治的立場によって分かれる。独立志向の与党・民進党を支持する人々は「ドラマで描かれているのは起こりうる未来だから、いざという時に備えるべきだ」と好意的に見る傾向が強い。一方、国民党など野党支持者で、中国を刺激すべきでないと考える人々は「戦争を煽るのはいかがなものか」「与党の予算で作られたドラマで、民心に不安を与えて軍事費を増やす狙いだ」と否定的に見る。
「台湾同胞」として中国を旅する
筆者は日本で生まれ育ち、23歳で語学留学のため北京へ渡った。1989年、天安門事件の直後に台湾へ住居を移し、現地の女性と結婚。以来36年間を外国人として台北で過ごしたが、昨年、思うところあって台湾(中華民国)に帰化した。
国籍取得後、通称「台湾同胞証」という、中国大陸で自由に活動できる通行証を取得し、この夏に中国を旅してみた。中国政府は台湾を自国領とみなしているため、台湾人は申請すれば「同胞(自国民)」として中国に出入りすることができる。当然パスポートは不要だ。というより、中国政府としては「中華民国」と書かれたパスポートを受け付けるわけにはいかないので、代わりに台湾人だけを対象とした特別な身分証を発行する。それが台湾同胞証(略して台胞証)というわけだ。
台湾では1990年代以降、この台胞証をもって大陸へ渡り、市場開放からまもない広州や深セン、上海などで工場を作って成功を収めるビジネスマンが続出した。中国側にも、天安門事件で外国からの投資が激減した中、商売っ気あふれる台湾商人を呼び込むことで経済を活性化させる思惑があった。
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