台湾有事を正面から描いたドラマ「零日攻撃」が話題…“台湾人になった元日本人”が中国人民に「台湾侵攻」についてのホンネを尋ねると

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「両岸一家親」

 廈門市内を走るバスの中では、初老の男性に「台湾からですか。厦門と台湾は街の様子が違いますか?」と聞かれたので、私は「人々が親切なところが台湾人と似ていますね」と答えた。すると男性から「そうですよ。両岸一家親ですから」と返された。〈両岸一家親〉とは、「中国と台湾は一つの家族のように親しい」という意味で、習近平国家主席が掲げる統一のスローガンだ。

 出会った中国人の多くが、こちらが台湾人だとわかると「台湾は中国の一部なんだろう?」「そのうち、台湾本島にも橋がかかる日も来るだろう」などと平気で口にする。独立派の台湾人なら「何を言うか!」と拳を振り上げてしまうかもしれない。ただ、目の前の人たちはどう見ても悪気があって言っているわけではなく、情報が制限された社会で暮らしていて、台湾のことに無知なだけなのだ。
 
 台湾人の多くは日本人が思っているより冷静で、海を越えた軍事侵攻は中国軍に不利だから、本当に侵攻してくるとは思っていない。一方で、中国はいくら警戒しても足りないということも理解している。台湾人は教育レベルも高く、中国政府があらゆる手段で統一戦を仕掛けてくると考え、それに備える危機意識と知力を持っている。

 翻って、中国人民はどうだろうか。14億人という人口の中で激しい貧富の差があり、低い教育しか受けていない人も多い。その中でどれだけの人が台湾のことを知っているか。せいぜい聞きかじりで「すでに台湾は中国の一部だろう?」という類の誤った理解しか持っていないのである。

 中国当局からしてみれば、経済的な交流から徐々に台湾へ中国化を浸透させるのが主な戦略だろう。それでも、2028年1月の台湾総統選挙で民進党の優勢が予想されれば、2027年ごろに最終行動としての「ゼロデイ攻撃」を仕掛ける可能性もゼロではないのである。

広橋賢蔵(ひろはし・けんぞう)
台湾在住ライター。1965年生、1988年北京留学後、1989年に台湾に渡り「なーるほどザ台湾」「台北ナビ」編集担当を経て、現在は台湾観光案内ブログ「歩く台北」主宰。近著に『台湾の秘湯迷走旅』(双葉文庫)などがある。

デイリー新潮編集部

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