「アフリカから移民がきたら何が問題?」 大炎上した“ホームタウン事業”に古市憲寿が言いたいこと
「日本ってアフリカに乗っ取られて滅亡しちゃうんですか」「アフリカ人が大挙して日本に来るんですよ! 警戒心を持って!」
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どちらも最近、実際に耳にしたせりふだ。前者は病院勤務の20代、後者は60代の文化人。共にTikTokなどのショート動画で「アフリカ・ホームタウン」構想の解説を見たらしい。
ことの発端は8月末に開催されたアフリカ開発会議。千葉県木更津市など日本国内の4市を「ホームタウン」と指定して、アフリカと交流を深める計画が、特別ビザ発給や移民促進を伴うものだと誤解された。実際はただ「姉妹都市」に近い話なのに、ナイジェリア政府が特別ビザ発給を日本が用意すると発表してしまう(その後、撤回)。「ホームタウン」という言葉も反感を呼んだのだろう。
ネット上には「ホームタウン」構想を批判する言説が溢れ、外務省やJICAは火消しに躍起になった。だが残念だったのは否定の仕方。「移民の受け入れ促進や相手国に対する特別な査証の発給を行うといったことは想定されておらず」というのだが、ではなぜ「アフリカ・ホームタウン」構想が必要かという熱いプレゼンがないのだ。
アフリカにはとんでもない可能性がある。まず、世界の鉱物資源の大半がアフリカ大陸に眠っていて、半導体の時代には資源の宝庫だ。さらに土地が広大なのでサハラ砂漠を巨大太陽光発電所にしたり、東アフリカでは地熱発電も期待できる。灌漑(かんがい)と物流を整備すれば一大農業地帯にもなる。2050年には地球人口の4分の1がアフリカ人となり、労働力としても消費者としても魅力的だ。
アフリカと交流を持つことは、人口減少が進む日本にとって絶対に必要である。そんな思いと共に「アフリカ・ホームタウン」は構想されたのではないのか。事実、今年急に湧いた話ではなく、「地球儀を俯瞰する外交」をしていた安倍晋三元首相の時代に、「ABEイニシアティブ」として始まったものだ。
「ホームタウン」構想に限った話ではないが、ファクトチェックのような反論には言論としてのパワーがない。「事実ではない」と反論したくなる気持ちは分かるが、それは守り以上でも以下でもない。いくら「事実ではない」と繰り返しても、言葉の勝負としては劣勢だ。
同時に思ったのは「ホームタウン」構想が直ちに移民促進やビザ発給につながるものではないとしても、将来的な移民促進を否定しないだろうということ。本当にアフリカと木更津が熱心に交流するようになり、留学生や短期労働者が行き来するようになれば、移住を考える人も出てくるだろう。それで何が問題なのか。
犯罪に手を染めた外国人を擁護する必要はないし、移民政策には文化統合も必須だろう。だが将来的に日本にアフリカからの移民も必要だと考えるからこその「ホームタウン」構想ではなかったのか。もしもその覚悟がないのなら、いっそ構想ごとやめてしまえばいいと思う。
(編集部注:9月25日、JICAは「アフリカ・ホームタウン」事業の撤回を発表した)




