世界陸上“引退”の織田裕二の「暑苦しさ」はなぜ視聴者を引きつけたのか “織田裕二劇場”終焉の背景には「アスリートのエンタメ化」が
「東京2025世界陸上」(TBS系)のスペシャルアンバサダーを務めた織田裕二が9月20日、今大会をもって「世界陸上」から引退することを宣言した。いつしか視聴者を引きつけるようになった、織田裕二の「暑苦しさ」が体現していたものとは……ライターの冨士海ネコ氏が分析する。
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「これで本当に卒業します」。どのアイドルよりも、織田裕二さんがそう口にした瞬間、世間はざわつき、肩を落としたたのではないだろうか。
世界陸上の顔としてメインキャスターを務めて25年、今回はスペシャルアンバサダーとして中継を盛り上げてきた織田さんがついに勇退する。しかし長年、織田さんのあり方を巡っては賛否両論が渦巻いていた。「経験者でもないのにうるさい」「暑苦しい」と批判され、中井美穂アナが困惑する場面も「お約束」に。織田さん自身も「たたかれてばかり」と苦労していたようだが、ついに令和の今、その「暑苦しさ」が「愛おしさ」に変わった瞬間が訪れた。
織田さんばかりがたたかれがちではあるが、スポーツ中継に芸能人を起用するのは昔から定番の手法だ。巨人戦の中居正広さんや、バレーボールでは毎回旧ジャニーズのグループが登場して歌うのは平成の風物詩でもあった。近年ではさすがにお飾り的な演出は少なくなり、そのスポーツの経験者を起用することでバランスを取っている。野球ならシニアリーグ経験もある亀梨和也さんや、アメリカンフットボールならオードリー、バスケットボールなら広瀬すずさんなど。今回の世界陸上でも、学生時代に陸上部に所属していた今田美桜さんと&TEAM・Kさんの二人が抜てきされ、好評だったようだ。
その系譜において、織田さんの存在は確かに異色だった。陸上経験はなく、演技の世界でずっと生きてきた彼が、陸上中継の顔を務める理由はなかった。だからこそ「知ったかぶり」「お前が主役じゃない」という批判を受けやすかったのだろう。
初期の頃から熱血青年を演じるかのような過剰な「暴走」は浮きがちで、実況アナや解説者との温度差が露骨に出てしまっていたように記憶している。勝敗うんぬんよりも織田さんの高過ぎるテンションに目がいってしまうことも多かった。2007年大会での発言「地球に生まれてよかったー!」は、芸人・山本高広さんにモノマネされ、彼の持ちネタとなったほどだ。
だが、令和に入り状況は変わる。SNSの普及で有名人の発言は即座に炎上する時代。慎重に言葉を選び、無難なコメントに終始するタレントばかりになった中、織田さんの「真っすぐ過ぎる感情表現」が一周回って新鮮に映ったのではないだろうか。
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