すい臓がんで余命6か月…抗がん剤治療を拒否した選択を「誇りに思う」 倉田真由美が明かす夫の死生観

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対処療法を選択

 夫は標準治療である抗がん剤は選びませんでしたが、対症療法としての胆管ステント手術と胃と小腸を繋ぐバイパス手術は受けていました。ステントは数か月おきに交換しており、入院も何度か経験しています。

 特にバイパス手術の際は、医師からいくつかの選択肢が提示されましたが、夫は即座に「死ぬまで好きなものを食べたい。バイパス手術します」と決断。術後は、ステーキなどを食べられるほど、食欲は回復しました。

 自分の命の責任は自分しか取れません。だからこそ、自分で選択するのが一番良い、と考えています。夫もそうやって自分の人生を選び、結果として良い選択をしてきたと私は誇りに思っています。

 医療現場では様々な治療法が提示されます。その際、「これはやるけど、これはやりません」と、自分で決める権利があることを多くの人に知ってほしいですね。医者の言うままに全て従うのではなく、自分で選択することが大切だと思います。

 知らないと「先生にお任せします」となってしまいがちですが、それが必ずしも本人にとって良いとは誰にもわかりませんから。いろんな選択肢の中から、自分で決めれば後悔も少なくなるはずです。

 治療の結果に対する「解釈」も様々です。夫の場合、言われた余命よりも長く生きました。これも、医者の見立てが違った、抗がん剤をやらなければ長く生きられる、いや抗がん剤をやっていればもっと生きたかもしれない、と様々な解釈ができます。正解は誰にも分からないのです。

 今回の本のタイトル『夫が「家で死ぬ」と決めた日』には、「自分で決めること」の大切さという意味を込めています。「家で死のう」と訴えているわけではなく、「生きたいところで生きる、死にたいところで死ぬ」ということを伝えたかったんです。

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 第1回【「家で死にたい」夫の願いを叶えた漫画家・倉田真由美 すい臓がんステージ4、標準治療を選ばなかった夫婦の選択】では、在宅で看取ることについて語っている。

倉田真由美
1971年、福岡県出身。漫画家。一橋大卒業後、『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセーを手掛ける。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。近著に『抗がん剤を使わなかった夫』(古書みつけ)がある。9月30日には「本屋 B&B」にて『夫が「家で死ぬ」と決めた日』 発売記念イベントを開催予定。

デイリー新潮編集部

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