すい臓がんで余命6か月…抗がん剤治療を拒否した選択を「誇りに思う」 倉田真由美が明かす夫の死生観
余命をまっとう
生前のメディアインタビューで、「いつでも死んでいい」と語っていた映画プロデューサーの叶井俊太郎さん(享年56)。がんが発覚してからは、抗がん剤治療を拒否し、自分が生きたいように生きた。最新刊『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』(小学館)を出版した妻で漫画家の倉田真由美さん(54)に、夫の姿はどのようにうつったのか。(全5回の第3回)
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【写真】「いつでも死んでいい」と語っていた叶井俊太郎さん。大好きだった「カップ麺」を食べる姿、娘との貴重2ショットも
夫は「もういつでも死んでいい」と、ずっと言い続けていました。いつも「楽に死ねるボタンがあったら押すよね」と口にしていました。
唯一の願いは「痛いのだけは嫌だ」というもの。夫が心残りなく死を受け入れている姿を見るのは、私にとって「すごく楽」だったと思います。もし、彼が「死にたくない」と強く訴えていたら、私にはどうすることもできないからです。
夫と交わした最後の言葉は「俺、昨日やばかったよね」でしたが、その前の言葉は、夜中に訪問医の先生が来た時に発した「痛いのだけはやめて」でした。意識を失いそうなギリギリの時でさえ、彼が最も避けたかったのは痛みだったのです。
夫は2022年6月にすい臓がんの診断と余命の宣告を受けました。抗がん剤治療は行わず、対症療法だけで余命をまっとうすると結論を出しました。
抗がん剤治療には賛否両論あるにもかかわらず、日本では「標準治療をしましょう」という意見が強く、否定的な意見はあまり表に出ない傾向があります。メディアや医師監修の記事も、ほぼ標準のコースを選択させるものが多いと感じています。
ですが、私が知る限りでは、抗がん剤治療をせずに長く生きているケースも複数ありました。
例えば、私の知り合いの男性のお母様は、15~16年前に子宮頸がんのステージ3が見つかった際、抗がん剤治療と手術を選ばず、「もう思い残すこともない」と決断したらしいのですが、今も生きていると聞いています。
抗がん剤をやらなければすぐに死ぬ、というわけではないのだと感じます。人によるし、抗がん剤をやったせいで早く死ぬケースもあるからです。どれが一番正しいかなんて結果論でしかなく、結局は自分で選ぶしかありません。
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