複雑化する2025年の「持ち家vs.賃貸」論争 住宅価格も賃料も“沸騰”のいま「無視できない視点」とは

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男性88歳、女性92歳が死亡年齢の最頻値であることを考慮すると

 2025年9月に厚生労働省が発表した住民基本台帳に基づく百歳以上の高齢者の総数は、過去最多の9万9763人となった。

 老人福祉法が制定された昭和38年の百歳以上の高齢者は、全国で153人なので60年余りで寿命が大きく伸びたことになる。

 簡易生命表に基づく昭和38年(1963年)の平均寿命は、男性が68.05歳。女性が72.87歳。令和6年(2024年)は、男性が81.07歳、女性が87.13歳。2023年の死亡年齢の最頻値は、男性が88歳、女性が92歳なので「人生100年時代」というのは、大袈裟な表現ではない。

 仮に、65歳まで働くとして、男性の場合は23年間、女性の場合は27年間が年金生活となる。30年後の福祉の状況は予想し難いが、少子高齢化の進展で社会保障費が増大しており、大きな期待はできないだろう。

 2024年の家計調査によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入は、月額25万2818円。可処分所得は、22万2462円となっている。いっぽう、消費支出は25万6521円で、差額分は3万4059円となっている。

 注意すべきは、住居費が1万6432円となっていること。賃貸であれば、さらに支出が増えることは必至で、老後の余裕資金を十分確保することが必要になる。

 単身者の場合はどうだろうか。2024年の65歳以上の単身無職世帯の家計収支を見ると実収入が、13万4116円と2人世帯と比べてかなり少ない。可処分所得は、12万1469円で消費支出は、14万9286円。こちらも住居費は、1万2693円となっているので、家賃負担が必要であれば、月額の支出はさらに増えることになる。単身者でも持ち家でなければ、老後にある程度の余裕資金が必要だ。

 令和5年住宅土地統計調査によれば全国の持ち家は、3387万6000戸で持ち家住宅率は60.9%。持ち家住宅率は、世帯主の年齢とともに上昇し65歳を超えていくと8割に近づいていく。

 認知症などの健康上の理由から、高齢者が有料老人ホームなどの高齢者施設を利用するケースもあるが、資産性のある住宅を保有していれば、自宅売却によって入居費用を賄うこともできる。老後のライフプランを考えると持ち家のメリットは、とても大きい。

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