複雑化する2025年の「持ち家vs.賃貸」論争 住宅価格も賃料も“沸騰”のいま「無視できない視点」とは
一度きりの人生、悩みの種は尽きないが、なかでも重要なテーマに「持ち家か賃貸か」の選択がある。不動産コンサルタントの岡本郁雄氏は「それぞれにメリットがあるものの、家賃も住宅価格も上昇するいま、その選択はより難易度が増している」と指摘する。2025年における「持ち家vs.賃貸」の現在地とは――。同氏のレポートをお届けする。
【写真を見る】東京23区の将来賃料を試算 家賃の伸びが低いこれから“狙い目”のエリアとは
家賃も住宅価格も上昇 「持ち家か賃貸か」は悩みどころ
家賃の上昇が止まらない。不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」発表の2025年7月度の賃料データによれば、ファミリー向き賃貸物件の平均掲載賃料は、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で14万315円(前年同月比109.7%)、近畿圏(大阪府、兵庫県、京都府)で8万6788円(前年同月比103.3%)となり、首都圏、近畿圏ともに2021年2月以降の最高賃料を更新した。
首都圏では東京23区(23万7195円)が前年同月比113.5%、近畿圏では大阪市(13万2950円)が前年同月比110.2%と、都心部の伸びが顕著だ。単身者向けの賃料も上昇しており、賃貸から持ち家へ住み替えを検討する人もいるようだ。
いっぽうで、建築費の高止まりや地価高騰によって住宅価格の上昇も激しい。
不動産経済研究所によれば、2025年8月度に売り出された首都圏新築マンションの平均価格は、前年同期比8.3%上昇の1億325万円。1平方メートルあたりの単価は、158万8000円で前年同月比4カ月連続上昇した。平均価格は、東京都下6518万円、神奈川県6608万円、埼玉県5918万円、千葉県6143万円。東京23区の平均価格は、1億3810万円となっていて、高年収でなければ手が届かない水準まで上昇している。
「持ち家か賃貸か」は、多くの人が悩むところだが、家賃と住宅価格がともに上昇する中で、今まで以上に判断が難しくなっている。
賃貸のメリットは「お金の自由度」 持ち家のメリットは「将来への備え」
賃貸と持ち家のどちらにもメリットはある。
筆者が思う賃貸の大きなメリットは、住宅ローンの借入が無くお金の自由度が高いことだ。住宅ローンの返済がないため、収入の範囲内で旅行や趣味などにお金をかけることができる。
また、借入がないためリスクも取れるので、貯蓄のほとんどを投資に回すことも可能だ。転職や独立を考える際にも、住宅ローンがなければ勤務地にも左右されず選択肢も広がるだろう。
いっぽうで、長期視点で考えると住宅購入には大きなメリットがある。
上昇しつつある家賃を払わなくて済むことだ。当然、住宅ローンを借りれば金利負担があるが、住宅ローン控除が利用できれば実質的な金利負担は、当初かなり抑えられる。
仮に、家賃効用が20万円のマンションを購入し、維持・管理費・資産税が月額5万円とすると、年間180万円の節減となる。20年間で換算すると3600万円だ。住宅資産価値の下落リスクを考慮してもこの金額は大きい。
さらに、住宅ローンが完済すれば、毎月の家計収支は大きく改善できる。持ち家なら、住めば住むほど得になるという計算だ。では、どのくらいの期間を想定し「持ち家か賃貸か」を考えるべきだろうか。
次ページ:男性88歳、女性92歳が死亡年齢の最頻値であることを考慮すると
[1/3ページ]


