高級住宅街も危ない!? 首都圏豪雨で「安全と思われていた場所」が浸水してしまったワケ

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タワマンがそびえ立つ品川区でも

 9月11日、東京都と神奈川県を災害級の大雨が襲った。驚かされたのは、高台のイメージのある「山の手」の目黒区や世田谷区、それに、タワマンが次々と新築されてブランド価値が上がっている品川区も次々と水に漬かってしまったことだ。

「この一帯に1時間あたり100ミリ以上の記録的な雨が集中的に降ったことで、品川区では戸越銀座商店街の一帯が冠水し、水が引いたいまも営業が再開できない店舗があります。昔から流れがよどんでいる立会川(たちあいがわ)も一気に水が溢れ、周囲の道路が水浸しになりました。等々力(とどろき)渓谷で知られる世田谷区の谷沢川(やざわがわ)も氾濫しています」(気象庁担当記者)

 豪雨が襲って河川の堤防が壊れたとき、東京近辺で浸水被害が起きるのは、昔から荒川や中川、隅田川、神田川に近い場所と決まっていたものだ。ところが、最近は様相が違う。

「常に低地が冠水してきた歴史から、国交省や東京都は増水時に流量を分散させる分水路や、一時的に水をためておく地下調節池などの整備を進めてきました。最近では埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路が有名で、その調圧水槽は荘厳にも見える地下施設であることから“神殿”の別名が付いています」(同)

 結果、江東区や江戸川区といった下町の冠水被害はあまり聞かなくなった。代わりにニュースで報じられるようになったのが「山の手」や、そこに降った雨水が流れつく品川近辺である。

注意すべきは“内水被害”

 防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏によると、

「専門的に言うと水害は “外水被害”と“内水被害”に分けられます(註・外水氾濫、内水氾濫とも言う)。外水被害とは河川の堤防が決壊したり、湖沼の水が溢れたりして受ける被害。昔の下町の水害は主にこれです。一方で内水被害とは、下水管や水路の容量を超えて溢れた雨水が、低いところにたまったり、滝のように道に溢れることを言います。ご存じのように東京23区の地面は、ほとんどコンクリートとアスファルトで覆われており、水を吸ってくれる地面が少ない。最近は地球温暖化も手伝って、豪雨の度合いが強まっているため、安全と思われてきた場所でも内水被害に遭いやすいのです」

 国交省(国土地理院)が作成した「基盤地図情報」を利用しているサイト(全国Q地図など)を見ると、今回、被害に遭った戸越銀座商店街だけでなく、田園調布のような高級住宅地にも谷があることが分かる。自分の家がどんな場所に立っているのか、気になる方は一度ご覧あれ。

週刊新潮 2025年9月25日号掲載

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