30代同棲カップルを毎夜悩ます“謎の赤ん坊”の泣き声 その矢先に「私、妊娠したみたい」……【川奈まり子の百物語】
これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集し、語り部としても活動する川奈まり子が世にも不思議な一話をルポルタージュ。今回は、結婚を控えた同棲カップルの衝撃のエピソードを紹介する。
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「6~7年前の出来事です」
こう前置きして語りだした和真さん(仮名、以下同)は2児の父で、40歳の既婚男性。現在の妻と交際中で、まだ同棲を始めたばかりの頃の出来事を、筆者に語ってくれた。
「本当は、妻が話した方がいいと思ったんです。つらい思いをしたのは彼女ですから。でも、つぶさに思い出すと、不眠症がぶり返しそうだと言うので…………」
「不眠症?」
「はい。一時は病院で睡眠薬を出してもらっていました。今はもう治りましたが」
6~7年前というと2018、2019年のことだ。
「その頃に何か起きて、それが不眠症の原因になったということですか?」
「順を追ってお話し致します」
同棲カップルの転居
理由は後述するが、以下、実際の和真さんの話から内容を一部変えてお伝えする。
当時、和真さんと恋人の歩さんは、それぞれの両親から結婚を強く勧められていた。
2人とも30代の会社員であり、もしも家庭を築くなら、早い方がいいとせかされていたのだ。付き合いだして約3年。半年前からは、和真さんが歩さんのマンションに転がり込む形で同棲もしていた。
この同棲については彼の両親が「歩さんに申し訳ない」と言って怒り、歩さんの実家に菓子折りを持って謝りに行く騒ぎになった。
歩さんの親も、口では「うちの娘もいい歳をした大人ですから」などと言いつつも、“もう機は熟したのでは……”など、しばしば圧をかけ、2人は日増しに追いつめられるようになった。
さらに、歩さんの住居は、街の再開発計画に伴う立ち退き期限が近づいており、引っ越し先を探す必要が生じていた。
2人で相談しあい、結婚と同時に和真さんの会社のファミリー向け社宅に入居しようと決めた。だが、あいにくその社宅は1年後まで空きがなかった。
「社宅が空くまで、なるべく安い賃貸に移って節約しよう」
彼は歩さんに提案した。どっちの実家も会社から遠いし、仕方がないね、と歩さんも納得した。2人で住んでいた歩さんのマンションは家賃がやや高かったので、安い物件に引っ越すのは結婚資金を貯めるにも好都合である。両家の親たちの同意も得られた。
すぐに適当な物件が見つかり、お盆休みに引っ越しをした。
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