1歳の我が子を亡くした「天使ママ」に奇跡が起きた…同じ境遇の友人から届いた驚愕の贈り物【川奈まり子の百物語】

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さようなら、ありがとう

 そして、それから2年後、有希さんは第三子となる長女を産んだ。

 本当に、Aさんから貰ったピンクのクマのぬいぐるみが役立つときが来たわけである。白いヒツジのぬいぐるみは仏壇のそばに飾っていたが、七回忌の折にお寺でお焚き上げしてもらった。お焚き上げには、有希さんの家族の他にAさんと娘も立ち会った。

 いよいよヒツジが焼かれ、煙となって空に昇りはじめた瞬間、有希さんの耳もとで赤ん坊の笑い声が弾けた。死んだ長男の笑い声だと思い、ハッとして辺りを見回したら、同様に周囲に視線を巡らせていたAさんと目が合った。

「有希さんにも聞こえた?」

「ええ。笑い声が……」

「ご長男だと思う。嬉しそうな声だったから、無事に成仏されたんじゃないかしら。それとも菩薩様になって家族のようすを見に来てくださったのかな? ありがたいわね」

 その場に居合わせた有希さんの夫や子どもたちは笑い声を耳にしておらず、聞こえたのは彼女たちだけだったそうだ。

 以降、2人の周りでは何も不思議なことは起きていないという。

 別記事【夕食で勧められた赤ワインに母常用の睡眠薬が混入… 両親の無理心中から逃れた娘が引っ越した先で見た夢は『無理心中の忌憶』】では、無理心中の生き残りの女性が引っ越した先の出来事が描かれる。

川奈まり子(かわな・まりこ)
1967年東京生まれ。作家。怪異の体験者と場所を取材し、これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集。怪談の語り部としても活動。『実話四谷怪談』(講談社)、『東京をんな語り』(角川ホラー文庫)、『八王子怪談』(竹書房怪談文庫)など著書多数。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。2025年発売の近著は『最恐物件集 家怪』(集英社文庫8月刊/解説:神永学)、『怪談屋怪談2』(笠間書院7月刊)、『一〇八怪談 隠里』(竹書房怪談文庫6月刊)、『告白怪談 そこにいる。』(河出書房新社5月刊)、『京王沿線怪談』(共著:吉田悠軌/竹書房怪談文庫4月刊)

デイリー新潮編集部

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