1歳の我が子を亡くした「天使ママ」に奇跡が起きた…同じ境遇の友人から届いた驚愕の贈り物【川奈まり子の百物語】
3つのプレゼント
考え直して妊活に取り組むと、有希さんは間もなく妊娠した。
Aさんも有希さんにひと月遅れて懐妊し、妊娠報告かたがた彼女にこんな提案を伝えてきた。
「有希さん、これからは子どもたちを交えてお付き合いしましょう。……そうだ。性別がわかったら教えて? こっちも教えるから」
やがて、それぞれのお腹の子の性別が判明した。有希さんの子は男の子、Aさんの子は女の子だった。いずれも経過は順調で、まずは有希さんが出産。健やかな男児で、お産も軽かった。Aさんはこれを喜び、「お祝いの品物を贈るから楽しみにしていて」と言った。
臨月のAさんに負担を掛けては……と思って遠慮したのだが、性別を聞いたときから準備していた物だから貰ってくれないと困るという。
ありがたく頂戴することにしたところ、退院後すぐに宅配便で贈り物が届いた。箱を開けて、有希さんは息が止まりそうになるほど驚いた。
長男のヒツジのぬいぐるみが入っていたのだ。
納棺の際に副葬品として柩に入れてもらい、小さな亡骸と共に荼毘に付したはずのぬいぐるみだった。震える手でそのぬいぐるみを手に取ると、プラスチックの商品タグが掌に触れた。
――これは新品なのだ。
2人の天使ママ
Aさんにヒツジのぬいぐるみについて話した覚えはなかった。偶然、同じ商品を買い求めたのだろうか。ヒツジのぬいぐるみの下に、タオル地で出来たクマのぬいぐるみが2つと、封書の手紙が入れられていた。クマはブルーとピンクの色違いで、手紙にはこう書かれていた。
《ヒツジは亡くなったご長男へ、ブルーのクマは生まれたての息子くんへのプレゼントです。ピンクのクマは、遠くない将来にきっと生まれる娘ちゃんにあげてください》
有希さんはAさんに
「どうしてわかったんですか? このヒツジのぬいぐるみは、長男の副葬品にして焼いてもらったのとまったく同じ物です。それに、娘って?」
と、スマホでメッセージを送った。すぐにAさんは返信をよこした。
「ただの直感。もしかして、ご長男くんがヒツジを選ばせてくれたのかもしれない」
「……僕を忘れないでというメッセージかな? Aさんはどう思う?」
「わからないけど、私だったら、しばらく仏壇にお供えしてから、お焚き上げする」
有希さんはその後、これから生まれるAさんの娘のために小さなアヒルのぬいぐるみを購入した。Aさんがしてくれたのと同じように、亡くなったAさんの第一子に布製の黄色いアヒルを、生まれてくる娘にはピンクのアヒルを買って、宅配便で送り届けたところ、間もなくAさんからメッセージが届いた。
「また奇跡が起きた! 同じ品物を死んだ息子の柩に入れてもらったの。間違いなくこの黄色いアヒルだった。亡くした子どもたちが奇跡を起こしたとしか思えないよ」
――こうした出来事があり、出産を機に天使ママの会をやめた後も、2人は親しく付き合いつづけた。
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