「奥歯の不具合」がアルツハイマーにつながる! 専門家が教える予防方法

ドクター新潮 ライフ

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サプリメントよりも咀嚼を

 特定の栄養素が不足するのであれば、サプリメントで補う手もありそうだが、

「咀嚼によって消化器系が刺激され、唾液や消化液の分泌が促されることで腸の消化吸収力が高まります。ところがサプリメントの摂取では咀嚼が不要のため、十分に吸収できません。サプリメントが認知機能の悪化を防ぐかどうかには諸説ありますが、私は疑問に思っています」(池邉教授)

 咀嚼こそが消化吸収のスイッチをオンにするというのだ。

「オリーブオイルやナッツに代表される地中海食など、認知症予防に効くといわれている食材は多くあります。ではそれをサプリメントにして摂取すればいいかといえば、単に飲み込むだけでは難しいでしょう。そうではなく、何か硬いものを一緒に噛みながら取り入れるのであれば、効果が望めるかもしれません」(同)

「かきくけこ」は奥歯で

 前述したSONICの一環で池邉教授らは、75歳以上の高齢者478人を対象に、噛む力や飲み込む力などの口腔機能とメンタルヘルスとの関係も調査している。それによると、両者には正の相関があった。つまり口腔機能がしっかりしていればメンタルヘルスも良好であるとの結果が得られたという。

 ただし、両者が直接関連するわけではない。二つを媒介するのは、やはり「食」である。それも特定の栄養素ではなく、食事という行為そのものだというのだ。

 研究チームは口腔機能やメンタルヘルスの状態の他、野菜や果物をどれくらい摂取しているかについても尋ねた。その結果、口腔機能の状態が良好な人は、野菜や果物の摂取量も多く、社会的交流も盛んな傾向にあることが分かった。さらに社会的交流が盛んな人は、メンタルヘルスも良好な状態にあるとの結果が得られたのだった。

「人と交流する主な機会は会食です。ところが、噛み合わせが悪化して食べにくいものが出てくると、どうしても会食を遠ざけがちになります。歯並びなど見た目も悪くなるので、外出もためらわれるようになる。そうした生活の変化がメンタルヘルスにじわじわと影を落とし、うつ症状や意欲の低下につながっていくのです」(池邉教授)

 社会的交流との関連については前出の鮎川教授も、

「『たちつてと』『さしすせそ』は前歯を失うと発音しにくくなるのに対し、『かきくけこ』は舌の奥の方が奥歯に当たって発せられるので、奥歯を失うと発音しにくくなります。歯は発音に重要な役割を果たしていて、話すのがおっくうになると誰かに誘われても遠慮しがちになる。人とのコミュニケーションが減ることも認知症の大きなリスク要因です」

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