中学受験「魔の月」で増える親子間の軋轢 小6「9月の志望校判定」でまだ焦るべきではない理由
まだ焦る時期ではない
小学6年生の秋前までは、SAPIXや日能研をはじめ塾のあらゆる層を対象にした模試が行われますが、実際の入試問題には各校に色があります。これまでやってきた模試と入試の過去問には乖離があるため対策が必要で、いきなり解けることはまずない。中学受験の勉強は徐々にギアを上げていくものだということを知っておかなければなりません。
また、大手塾の模試は最上位層向けにつくられています。だからこそ、SAPIXや早稲田アカデミーの下のクラスの子は、塾の模試では算数で数問しか解けないけれど実際に志望する中堅校や標準校の過去問だったら8割取れるということがよくあります。一概に模試の成績が悪いからといって焦るのは早計でしょう。
最難関校を受ける子どもたちにとっては志望校別の冠模試の判定は大事ですが、それ以外の子は過去問を解けるかが大切。けれど、その過去問も9月~10月ではなかなか解けず、11月ごろからようやくコツがわかってくるものです。この時期、つい親は焦って子どもを追いつめがちですが、本来はまだ過剰に焦るべき時期ではないのです。
親がプレッシャーに負けて、子どもを過度に追い詰めた結果は悲惨です。
衝突しているうちはまだ良いですが、さらに進むと会話がなくなっていく。子どもが学校での出来事を話そうとしたのに親が受験の話を持ち出すと、子どもも嫌がって日常会話をしなくなっていきます。学校の友達とトラブルを起こす、塾をサボって警察に補導される、といった問題行動が増えてくるのもこれからの時期の特徴です。
塾に行く前にお腹が痛くなって授業を休んだと思ったら、開講時間になったら急に調子が戻るということもあります。この様子を見て“サボっている”と無理に塾に行かせる家庭がありますが、校舎まで行くけど足がすくんで中に入れない、気持ち悪くなって吐いてしまう子どももいます。
親も子どもが苦しんでいるのは気付くのですが、あと3~4ヶ月だから頑張れといってそのままにしてしまうことも多い。しかし、私が見たケースでは、耐えきれなくなった子どもがまず塾に行けなくなり、次いで学校にも行けなくなり、なんとか勉強は続けたけれど入試当日に布団から出て来られなくなったという事例がありました。一度、受験で心が折れてしまうと、中学校に入った後のGW明けに不登校になってしまうということもよくある話です。
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