8名無差別殺傷でも「池袋通り魔事件」の死刑が未だ執行されない理由 執行に反対する「日弁連」 実行犯は「独房で廃人同様の生活を送っている」

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執行されない死刑

 令和となった今でも、造田の死刑は執行されないままだ。刑事訴訟法では、死刑確定から刑が執行されるまでの期間を半年以内と定めている。2015~2024年に執行が行われた死刑囚の、確定から執行までの平均期間は9年強。造田の場合、確定から既に18年の歳月が経っている。

 執行の遅れの背景には、造田の精神状態が影響していると思われる。刑事訴訟法479条には、「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する」とある。造田がこれに当たるのではないか、との指摘が出ているのだ。

 死刑制度の廃止を求めている「日本弁護士連合会」は、2018年、心神喪失の疑いがあるとして、8名の確定死刑囚の執行停止を法務省に勧告している。そのうちの一人が造田。日弁連は勧告書でこう述べている。

「(日弁連のメンバーと協力医が)面会したところ、(造田は)自分の置かれた状況に対して全く関心を示さず、自閉、感情平板化(感情鈍麻)、無関心という統合失調症の中核的な陰性症状が著明である」

 こうした指摘の影響もあり、執行が後回しにされていることが窺えるのだ。

犠牲者の夫の思い

 事件から26年。先の2000年の「週刊新潮」の記事で、犠牲者・B子さんの夫はこうも述べている。

「私としては、造田が妻が生きた年月より1日たりとも長く生きるようなことがあったら、気持ちの持って行き場がなくなります。ですから、国が裁くのに限界があるなら、私が“裁き”を下してもいいと思っています。とにかく、絶対に造田を妻以上に長生きさせないことが、今の私にとって最大の目標なのです」

 B子さんが亡くなったのは29歳。そして造田は今年で50歳となる。己を閉ざした造田は、死刑が確定したにもかかわらず、被害者の人生よりも遥かに長い年月を生き永らえている。これ以上の不条理はあるまい。

 【前編】では、事件の詳細と造田の生い立ちについて詳述している。

デイリー新潮編集部

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