「曲は暑いほうができる」…クレイジーケンバンド「横山剣」が創作の秘密を語る

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マーケティングはやらない

 それにしても、横山の頭のなかでなぜ曲がどんどん生まれてくるのか――。

「それはたぶん、R&B、ソウル、アジア系、シティポップ、歌謡曲……。特定のジャンルや音楽家ではなくあくまでも楽曲単位で聴いてきたからかもしれません」

 あくまでも脳内から降りてきた楽曲を育てていく。だからマーケティングはやらない。

「タイアップの依頼があれば、それに沿う曲をつくる努力はしますよ。でも、流行を研究したり、市場調査をしたり、そんなことはしません。意図的にヒット曲をつくろうとして、実際にヒットすることなんてめったにないですから。自分が聴いて気持ちのいい曲、聴きたい曲や歌いたい曲を自分でつくり、自分で歌い演奏する。シンプルです。やりたい曲をやらなければ、音楽を続ける意味がないです」

 そんな横山が思うCKBの音楽の本質とは――。

「僕たちはこれからも、人間の悲しみを決して暗くではなく陽気に歌っていくでしょう。音楽でダイナミズムを出せるのは、哀愁や情緒だと思っているんですよ。幸せや今でいう“リア充”を歌っても、リスナーの心には響かない。

 もちろん、例外はありますよ。たとえば加山雄三さんが幸せを歌えば聴く人の心に届くと思います。誰もが幸せな気持ちを共有できる。でもそれは加山さんならでは、です。僕らCKBの音楽のベースはやっぱり哀愁です。切なさです。悲しみです」

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「メンバー同士、けんかはしますが、仲はいい」――。第1回【「メンバーとの年俸交渉もあります」…結成28年、クレイジーケンバンドが今も新作を出し続けられる理由】では、毎年夏の新作&ツアーのスケジュールを長く続けられる理由、大所帯バンドの運営などについて語っている。

神舘和典
1962(昭和37)年東京都生まれ。雑誌および書籍編集者を経てライター。政治・経済からスポーツ、文学まで幅広いジャンルを取材し、経営者やアーティストを中心に数多くのインタビューを手がける。中でも音楽に強く、著書に『不道徳ロック講座』など。

デイリー新潮編集部

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