「メンバーとの年俸交渉もあります」…結成28年、クレイジーケンバンドが今も新作を出し続けられる理由
日常生活において「俺の話を聞け」というフレーズが脳内で響いた経験を持つ方も多いことだろう。「タイガー&ドラゴン」のヒットから20余年、クレイジーケンバンドはいまなお活発に活動を続けており、今年も新作を発表。そのままツアーに突入する。還暦すぎてなおエネルギッシュなリーダー・横山剣に、バンドを長続きさせる知恵から新作秘話まで、音楽ライターの神舘和典氏が聞いた。【全2回の第1回:取材・文/神舘和典】
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【写真】相変わらず男前! シャツとハットだけで抜群にキマる65歳・横山剣
加齢に向き合って
クレイジーケンバンド(以下・CKB)のヴォーカリストでメインコンポーザー、自称“東洋一のサウンドマシーン”横山剣(65)はタフだ。ベテランの域に入りながらなお、毎年確実に新作を発表し続ける。
今年もCKBは新作をリリースした。通算25枚目となるアルバムのタイトルは『華麗』。新作を発表すると、総勢11名の“大所帯バンド”を率いて精力的に全国ツアーも行う。これも毎年の恒例行事である。
「CKBは結成して28年。僕の年齢は65歳。人は平等に年齢を重ね、僕も今、加齢を実感しています。頭のなかのイメージのとおりに身体が動かなかったり、段差のない場所で転んだりね。アルバムはそれにちなんで『華麗』にしました。“加齢”とのダブルミーニングです。タイトルの文字は“brilliant”。でも、実は“aging”でもある、とね。でもね、気持ちは17歳のときのままです」
音楽へのパッションはまったく衰えていない。前述の通り、CKBはほぼ毎年の夏から秋に必ずオリジナルアルバムを発表する。
「性質なのか、体質なのか、頭の中でどんどん曲が生まれてきちゃうんですよ。そういう身体になっている。僕の場合、新作は1年に1枚のペースが合っています。3年に1枚、4年に1枚でいいと思ったら、曲が生まれない身体になっちゃうんじゃないかな」
そして、完成した楽曲はすぐにリスナーに届けたくなる。
「人間って、体内でできたものはどんどん体外に出さないと気持ち悪いでしょ。身体のなかにためておくのは健康によくないですから」
新作とツアーのサイクルを回す
なかなか作品ができないミュージシャンが聞いたら、嫉妬でおかしくなるのではないだろうか。
「僕にだって、好不調の波はありますよ。洪水のように何曲も生まれることもあれば、便秘のようになかなか外に出てくれないこともある。1か月くらい冴えない音ばかりが脳内で鳴ることもある。そういう時期は、あっさり諦めます」
ベテランアーティストは大きく二分される。まず、新曲はほとんど発表せずに、かつてのヒット曲で懐メロ的にコンサートを行うタイプ。新曲を制作しないので、少ないコストで活動できる。ヒット曲を聴けるのでれば、新曲がなくてもファンの多くが満足している様子だ。ベテランの多くはこのパターンかもしれない。
もう一方は、キャリアを重ねても毎年新作を発表し、新曲を中心にセットリストを組んだツアーを行うタイプ。CKBはこちらだ。ベテランの領域になっても、このスタイルは崩さない。
「新曲がどんどんできてしまうから、アルバムもできる。すると、新しい曲を皆さんの前でやりたい。聴いていただきたい。その願望はまったく変わりません。それに、そもそも過去のヒット曲を中心にライヴをやることはCKBには不可能です。ヒットは1曲しかありません(笑)。ですから、新曲を歌わないとしたら、ツアーをやる意味を見出せません」
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