切手の貼り方を知らない20代も…郵便事業「630億円の赤字」でわかった深刻すぎる「郵便離れ」 コレクター激減で「記念切手」が“額面割れ”に
7月29日、日本郵便は、昨年度の郵便事業の営業損益が約630億円の赤字になったと発表した。そのうえ、飲酒の有無を確認する点呼が適切に行われていなかった問題が発覚するなど、不祥事が連発。1871年に前島密によって創始された郵便事業は顧客の信頼を急速に失いつつあり、大きな岐路に立たされている。【文・取材=山内貴範】
【写真】東京中央郵便局が入る「KITTE 丸の内」で販売されているアニメとコラボした切手
懸賞の応募にハガキを使わない
日本郵便のサービスを使う機会は、急速に減少している。最近、ゆうパックを利用した人は珍しくないだろう。だが、ハガキや封書を出したことがない人は想像以上に多いはずだ。懸賞が好きな人も、かつてはハガキを大量に買い込んでいたと思うが、QRコードを読み込んだり、SNSなどネット経由で応募したりするのがすっかり主流になった。
驚くことに、10~20代には、“切手”の使い方を知らない人がじわじわ増えているという。ある企業の社員は「新入社員に請求書を送ってほしいと頼んだところ、“切手をどうやって貼ればいいのか、わからない”と言われたんです」と語る。
「話を聞くと、郵便を出したのは大学受験の願書を送るときくらいで、それ以外に郵便を出したことがないのだとか。ここまで郵便が使われなくなっているのかと驚きました。もっとも、当社ももはや請求書はメールで送ることが多いので、紙の請求書を出す機会はほとんどないのですが」
切手を舐めて貼ることを知らない
筆者はライターという仕事柄、郵便を使うことが今でもそれなりにある。メールやSNSなどで連絡ができない人に取材依頼をするためである。あるとき、仕事で同席した10代の女性から「切手ってどうやって貼るんですか?」と聞かれて、仰天した。使い方を説明したら、「切手ってそう使うんですね!」と感激されてしまった。
また、筆者がとある若手作家から受け取った郵便物で、切手がセロハンテープで貼られていたことがある。封書の住所を書き損じてしまい、一度はがした切手を利用したのかと思ったが、たぶん切手を舐めたり、水で付けたりして貼ることを知らなかったのだろう。郵便を窓口で直接差し出すケースも多く、切手を貼ってポストに投函したことがほとんどない人もいるかもしれない。
郵便の衰退を郵政民営化の失敗と批判する主張は多く聞かれるが、そもそも、そう話す人が郵便を使っているのかという疑問がある。特に若い世代では、郵便をほぼ使ったことがない人が増加しているのは間違いないようだ。
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