保護猫は愛せるけれど「我が子はちょっと…」な45歳夫 妻からの“離婚して”にも驚きの対応
真知さんからの連絡
結局、賢哉さんは産まれた子どもにも会わないままだった。毎月、数万円の養育費を振り込み続けたが、妻の真知さんからも連絡はなかった。30歳のとき、真知さんから書留が届いた。サインした離婚届が入っていた。
「子どものことも愛してくれる人と巡り会ったので離婚してほしいと書いてありました。でも僕、それを無視したんですよ」
本当は後悔していると気づいていた。妻にも子どもにも寄り添えないままだったことを。今からでも会いに行きたいと思ったが許されるはずもないとわかってもいた。だから無視した。あげく彼は転職して引っ越し、行方をくらませた。
「卑怯ですよね。すべてから逃げて……。どうして肝心なときに逃げてしまうのか」
寅さんになったような…
逃げればひとつ後悔が残る。それが積み重なれば、自分で自分を許せなくなっていく。わかっていながら逃げてしまう。
「転職先は本当に出張の多い仕事で、なんだかオレ、寅さんになったような気持ちでした。日本中、アジア中、駆け回って、だんだん妻子の記憶も薄くなっていった。だけどいつも逃げている実感はありました。離婚届は破いてしまったから、自分から離婚届を書いて送ろうかと思い悩んだこともあった。だけどなぜかそれができなかった。真知を困らせてやろうと思ったわけじゃない、でもピルを飲んでいると騙したのは彼女のほうだという気持ちも少しあった。自分自身があまりにガキだったと思います」
反省の弁はいくらでも出てくる。だが、時はいつでも前にしか進まない。過去にとらわれている彼に、前を向いて歩いていくことはできなかった。
忙しく働いていればすべて忘れることができる。そう思っていたのかもしれない。恋愛のように濃密な関係はもういらなかった。行きずりで女性と関係をもつことはあったが、心の通う関係は望んでいなかった。
だがそんな彼に転機が訪れる。
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半ば不本意ながら始まった「家庭」に向き合わず、しかしそんな自身の姿勢に後悔もある賢哉さんは、逃げることを選んだ。その後の彼が周囲と築く「奇妙な関係」を【記事後編】で紹介している。
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