3年で100倍超に 東京で「防災対応マンション」登録数が急増でも「手放しで喜べない」理由とは
「東京とどまるマンション」をご存じだろうか。災害発生時に自宅にとどまり「在宅避難」のできる設備を持つマンションを増やそうという取り組みだ。登録したマンションは、東京都から防災用の備蓄資材や非常用電源、浸水対策設備の導入にかかる費用の一部について補助を受けることができる。前身の制度は2012年から存在したが、2022年までの登録件数はわずか6件。それが一転、近年急速に数を伸ばしているというが、そこにはカラクリが――。都内マンションの販売価格を定点観測し続けるマンションブロガー「マン点」氏のレポートをお届けする。
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【写真を見る】グラフで見ると一目瞭然 ここ3年で“爆増”した「東京とどまるマンション」
東日本大震災の教訓に創られた「防災対応マンション」支援制度
2011年に東日本大震災が起きたあと、その際の被害を教訓に、多くの自治体が「防災対応マンション」の支援制度を創設した。
首都圏では、東京都の「LCP住宅」(後に「東京とどまるマンション」に改称)、中央区の「防災対策優良マンション」、墨田区の「すみだ良質な集合住宅」、荒川区の「災害時地域貢献建築物」、横浜市の「よこはま防災力向上マンション」、川口市の「防災体制認定マンション」などがある。
関西圏では大阪府・大阪市の「防災力強化マンション」、岡山市の「防災力向上マンション」があり、仙台市でも「杜の都防災力向上マンション」と同様の制度がある。
しかし、残念ながらこうした制度のほとんどは機能していないと言える。
なぜなら東京都を除き、登録件数が伸びていないからだ(次図を参照)。横浜市・大阪市・仙台市の累計でも60件に届かず、大阪府ではわずか8件しかない。
補助金をつけて再出発した「LCP住宅」
では、なぜ東京都だけが突出しているのか。
2012年4月。震災の翌年度に東京都が始めたのが「LCP住宅」制度である。LCPとは、Life Continuity Performanceの略、つまり「居住継続性能」を意味する。
制度創設の狙いは明快で、それは停電時にも最低限、水が出てエレベーターが動くこと。そして、防災マニュアルを策定・運用することだった。そうした条件を満たすマンションを登録・公開し、都民の安心と自助努力を支えよう、という仕組みである。
ただ、創設当初、非常用発電機の設置や廃熱利用の努力義務、15年以上の機器委託期間など、登録に立ちはだかる“高すぎる壁”があった(その後、壁は取り払われた)。
2020年には要件を拡充し、防災マニュアルの義務化も始まった。しかし立派な理念とは裏腹に登録は一向に増えず、その件数は11年間でわずか6件。「LCP住宅」という分かりにくい名前も相まって、存在感は消えかけていた。
転機となったのは、2023年1月だ。東京都が「LCP住宅」制度を「東京とどまるマンション」と改称し、補助金を付けて再出発したのだ。ここから一気に件数が跳ね上がる。
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