「“日本経済が復活した”と考えるのは間違い」 日経平均“急騰”のカラクリ けん引する「四つの業界」とは
【全2回(前編/後編)の前編】
まさかの史上最高値更新である。日経平均株価が上げ潮だというのだが、相も変わらず庶民の生活は苦しいままだ。投資に流れているはずの膨大なマネーは、いったいどこへ消えてしまったのか。不可思議な日本株の高騰にまつわる「四つの深層」をお届けする。
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〈はたらけど はたらけど猶(なお) わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る〉
石川啄木(たくぼく)の第一歌集『一握の砂』に収められた一首は、明治の近代化で貧富の格差が拡大した世相を今に伝えている。翻(ひるがえ)って令和に生きるわれわれは、手に握ったスマホ画面のニュース速報を見つめ、ため息をつく状況ではないだろうか。
4万3714円――。今月18日、日経平均株価が史上最高値を更新した。
その3日前に記録した最高値4万3378円を上回る勢いで、日本の株式市場は急騰しているのだ。
だが、日常の暮らしに目を向ければ、米やガソリンなどの価格は一向に下がらない。来月には食用油やマヨネーズなど日用品の値上がりが数多く予告されているのに、実質賃金はマイナスのまま。トランプ関税の影響で、産業の屋台骨である自動車メーカー各社の決算はボロボロである。
「マネーの流入が、出遅れていた日本株にも」
啄木が詠んだ歌と同様、今の世は働いても見合った果実を得られない。にもかかわらず、なぜ株価は上がり続けているのか。
「まず今回の株高を理解するには、株価が世界的に連動していて、国内だけのものではない。そのことを知る必要があります」
と解説するのは、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏である。
「マネーは国に関係なく、儲かるところに向かう。例えば『金』や『ビットコイン』などが買われる状況も、その一つです。ここ十数年も世界中の中央銀行がお金を流しっ放しにした結果、行き場のないマネーは米国株に流れていました。今年に入りドイツ株が史上最高値を記録したように、欧州でも株高が起きている。そうしたマネーの流入が、これまで出遅れていた日本株にも波及したのです」(同)
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