「“日本経済が復活した”と考えるのは間違い」 日経平均“急騰”のカラクリ けん引する「四つの業界」とは

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「日経新聞なんて読んでいない人たちが日本の株式を動かしている」

 エコノミストでテラ・ネクサスCEOの田代秀敏氏に聞くと、

「東京、そして名古屋の証券取引所での取引を見ても、株式の売り買いの約6割は海外投資家で占められています。そのうちの約77%が欧州勢。その主力の海外金融機関のファンド・マネージャーたちは、日本に居住せず、日本語も解さないから日経新聞なんて読んでもいません。そんな人たちが、日本の株式相場を動かしているのです」

 もはや彼らは日本株をコモディティ(投資商品)としてしか見ていないそうで、

「日本株が割安なら買って、割高になると売る。原油や小麦の先物と同じです。しかも実際の売り買いはコンピューターが行います。モニターをにらみながらディーラーたちが売買するなんて過去の話。今はアルゴリズム高速取引といって、AIが数千分の1秒単位で売り買いを行う。つまり相場は人間が解釈するものではなくなっているのです」(同)

「“日本経済が復活した”と考えるのは間違い」

 そんな海外投資家たちからすれば、日本株は格好のターゲットになっているとして、田代氏はこうも言う。

「1980年代末のバブルのピークから、日経平均は11.5%しか上昇していません。その間の物価上昇を踏まえれば、まだまだ日本株は割安。インバウンド勢が1杯1000円を超えるラーメンを“安い”といって食べている状況と同じ。だから株式相場は日本に住む一般人の庶民感覚とは連動していないのです。好調な米国株で生じた含み益を持つ海外投資家たちが、たまたまNY市場が閉じた時間に日本株が割安だと買ったに過ぎません。日経平均が最高値だからといって“日本経済が復活した”などと考えるのは間違いです」

 もはや日本市場は他力本願の相場と化しているのだ。加えて、このタイミングで日本株が買われたのには、こんな理由があった。

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏によれば、

「大きな要因として、日米通商交渉における最悪のシナリオが回避され、関税15%で決着したことが挙げられます。しかも当初は8月7日に発表予定の交渉結果が、サプライズ的に前倒しで出ました。これにより、投資家の間で“交渉がまとまらず延長されるのでは”“25%の関税が適用されてしまうのでは”などの不安材料が払拭されたのです」

 日本株の下落に賭けていた空売りの投資家たちが、買い戻しに走って株価に勢いがついたというのだ。

「同時期に発表された日本企業の4月から6月期の決算が、事前の予想より悪くありませんでした。むしろ一部の銘柄では、想定以上に良かったことから、日本経済は悪くないという見方が強まったのでしょう」(同)

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