酷暑と水不足の「異常気象」で「一等米が減少し、銘柄米は高騰」の深刻リスク…温暖化が招く「いまそこにあるコメの危機」

国内 社会

  • ブックマーク

水田に補助金なし

 コメが高騰し、消費者が必死に負担しても、農家の収入は増えない──コメ価格の上昇が始まってから、常に議論されてきた問題だ。この問題を政府は解決するどころか、むしろ悪化させているという。

「農業経営の安定化には、政府の補助金が必須だと考えています。今回、政府は結果的に一部の大規模農家が対象となる『乾田直播の助成金』を新設しました。乾田直播には労働力軽減や水田栽培に比べて少ない水で栽培できるメリットがある一方、機材整備などに相当額の投資が必要となります。だからこそ助成金を出すわけなのですが、私たちのような小規模の農家には挑戦しにくい分野です。加えて、考慮すべき点があります。乾田直播は労力を削減するとともに農薬と化学肥料が水田よりも必要となることです。同時にそれは、安心安全なコメ作りとは異なる種類の栽培方法であるということです。もちろん、今は増産が大きな目標なのだから、こうした農法があってもいい。だからこそ、日本人が昔から水田でコメを栽培してきた理由も同時に再考すべきではないでしょうか。水田栽培では、稲を苗まで育ててから水田に植えます。すると、雑草と比較して成長差が生まれ、結果、除草作業が軽減され、環境配慮型の農法を担保します。地域の保水力を高め、土壌内の微生物や生物を活性化させ、日本の伝統的な自然環境を維持してきた面もあります。こうした観点からも、政府は直近の増産だけでなく、稲作農地の多くを占める水田活用についても、あわせて知恵を絞るべきだと思います」

 第1回【早くも「新米」高騰で“異色の兼業農家”は「5キロ5400円」を懸念…現実味を帯びる「深刻なコメ離れ」と「ラーメン1000円の壁」の共通点】では、コメの高騰は消費者のコメ離れを加速させる可能性について詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。