酷暑と水不足の「異常気象」で「一等米が減少し、銘柄米は高騰」の深刻リスク…温暖化が招く「いまそこにあるコメの危機」

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 第1回【早くも「新米」高騰で“異色の兼業農家”は「5キロ5400円」を懸念…現実味を帯びる「深刻なコメ離れ」と「ラーメン1000円の壁」の共通点】からの続き──。農林水産省は全国のスーパーでコメの販売価格を調査し、その平均値を発表している。調査を始めた2022年以降、販売価格が過去最高に達したのは今年5月12日から18日までの週で4285円(税込、以下同)だった。(全2回の第2回)

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 翌週から下落に転じ、最新の平均価格は8月11日から17日の週で3804円。過去最高を記録した4285円との差は481円ある。「いくらなんでも再び4200円台に戻ることはないだろう」と楽観視している消費者も少なくないだろう。

 さらに随意契約の備蓄米に科せられていた販売期限が延長になった。これもコメ価格を抑え込む可能性がある。担当記者が言う。

「随意契約の備蓄米は販売期限が8月末と定められていました。理由は新米の価格に影響を与えないためです。ところが、まだ10万トンが出荷できていないなど、備蓄米を手にしていない小売業者が多いことがクローズアップされました。そこで小泉進次郎・農水相は期限の延長を発表したのです。本来は流通の問題だったのですが、消費者にとっては別の意味も持ちます。高騰している早場米の新米や銘柄米だけでなく、5キロ2000円台の備蓄米を購入できる可能性が出てきたからです」

 だが懸念がゼロというわけではない。特に今年は異常気象で猛暑が続き、一等米の減少が不安視されているのだ。コメの販売には検査が必要であり、その結果は価格に影響を与える。

一等米が減少!?

「農水省の公式サイトには『玄米の検査規格』というページがあり、『水稲うるち玄米』の検査基準を公開しています。検査は玄米の形や水分量、色などのほか、虫食い、病気、異物混入の割合などを調査して一等、二等、三等、規格外の4等級に分けます。実のところ見た目だけの問題で、食味については大きくは関係しません。ところが私たち消費者がスーパーなどの小売店で購入するコメは一等米と二等米が中心です。そして一等米が減少するほどの高温被害となると、二等米でも割れたコメや粒の小さなコメが増えてしまう傾向が指摘されています。そうなると消費者に届けられるコメの量が減る、いわゆる“歩留まりの悪い”状態が起きるため、コメの販売価格は上昇します」(同・記者)

 等級審査は買取価格に直結するので、コメの生産地では特に関心が高い問題だ。そのためコメの生育状況や検査の最新結果を報じた地域ニュースがネット上でも目立つ。そして今年は「一等米が減っている」という報道も散見される。ネット版記事の見出しだけをご紹介する。

◆猛暑が直撃…コメの品質・収量とも低下 農家「一等米が3分の2、収量も去年の1割減」 コメ不足へ募る懸念 【福井】(福井テレビ:8月20日)

◆すべて“二等米”に…極早生品種『葉月みのり』の初検査 高温少雨の影響受けるも出荷量は去年を上回る見込み「生産者が頑張ってくれた」新潟(NST新潟総合テレビ:8月19日)

◆西条で今年の県内最高気温38.1℃を観測 愛南町では稲刈りも…高温障害で一部のコメに影響(南海放送:8月6日)

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